バレンタインにスラウェシのカカオ農家が来日
1年で一番チョコレートが売れるのはバレンタイン・デー。都会の有名百貨店では、ここぞとばかり、他店にはないような世界中のチョコレート店の美味しそうなチョコレートが並びます。
筆者がアドバイザーをしている京都のダリケーも、今ではすっかりこうしたバレンタインのチョコレート店として常連になりました(ダリケーのアドバイザーになった経緯については、また別途、書くことにします)。
ダリケーは、インドネシア・スラウェシ産のカカオを使用した製品を作る、おそらく国内では唯一の店です。インドネシアは世界第2位・3位のカカオ生産国であるにもかかわらず、日本ではまだ知名度が低いのが現状です。
バレンタインをめがけて並ぶチョコレート店のほとんどは、製品としてのチョコレートやそれを作るショコラティエに注目が集まります。それはやむを得ないことですが、その原材料であるカカオには、どれだけの関心が寄せられているでしょうか。
ダリケーは今年、初めての企画として、ダリケーにカカオを供給してくれているカカオ農家の代表1名と現場でカカオ栽培指導を行うフィールドコンサルタント2名の計3名を、スラウェシから招聘しました。彼らの作ったカカオを原材料とするチョコレート製品が実際に売られている現場を見てもらうためです。
2014年以降、ダリケーは毎年8月、カカオ農家を訪ねる日本人向けツアーを実施し、参加者がカカオ農家と直に触れ合う機会を作ってきました。その参加者数は述べ150人程度います。単に、カカオ農家と会うだけでなく、実際に栽培方法を学んだり、カカオの苗を植えたりもします。
2017年のツアーでは、新しい試みとして、ツアー参加者が地元の小学6年生と一緒に、カカオ豆からチョコレートを作るワークショップを行いました。カカオ農家の子供たちにとっては、親が栽培するカカオがどのような製品になるのかを知る機会ともなりました。
こうした日本からスラウェシへのツアーのお返し、というわけではありませんが、今回のバレンタインには、スラウェシから3人を日本へ招いたのです。
このように、ダリケーでは、カカオ製品の愛好者とカカオ農家とが直接顔の見える関係を作ることを重要視しています。カカオ農家はより一層発酵の熟度を増したいいカカオを供給しようとし、消費者はそれをわかって、カカオ農家の顔を思い浮かべながらカカオ製品を消費する、そんな関係が既に生まれて動いているのです。
もちろん、彼ら3人の来日に合わせて、2014年からのツアー参加者が集まる「同窓会」が京都と東京で開催されました。3人はツアー参加者との再会を心底喜び、なお一層、良質のカカオを作っていきたいと強く宣言していました。
東京での「同窓会」では、ツアー参加者の一人の会社の場所を使わせてもらい、さらに、スラウェシからのカカオを使ったガトーショコラを密かに作っていただきました。このガトーショコラには、彼ら3人の似顔絵が。
このガトーショコラを彼ら3人と我々「同窓会」出席者で堪能したのですが、その美味しさに、全員が驚嘆しました。
ダリケーのチョコレートには、毎年、こうしたストーリーが重ねられていきます。
そして、生産者と消費者が顔の見える関係を作ってつながる、ということが、日本とインドネシアという外国であっても可能なのだ、ということを示してもいます。
ダリケーはチョコレート店と自称していません。カカオ店といった方が正しいかもしれません。また、農家をエンパワーメントするようなフェアトレードも謳っていません。いいカカオを作ってもらったら適切に高く買う、という当たり前の取引をしているだけです。
まだ日程は未定ですが、今年も、ダリケーのカカオ農園ツアーがあるはずです。もちろん、2014年以来毎年同行している筆者は、今年もお供する予定です。皆さんも、ぜひ参加されてみませんか。
参加予定の方は、今から8月後半の1週間程度を空けておいてもいいのではないでしょうか。
他のチョコレート店とはだいぶ違う、ダリケーの今後の展開にご注目ください。