【ぐろーかる日記】インドネシアのクラフトワークをめぐる新しい動き

Linkedinで知り合いになった友人(まだ実際の面識はない)が出しているウェブマガジンがあります。GARLANDという名前のこのマガジンは、クラフトやアートとそれを生み出す社会とのかかわりに関する話題が多く、いつも読みごたえのある記事が満載なのですが・・・。

最新号として送られてきた特集は、インドネシアのバティックなどクラフトワークを中心とするアートと社会の動向でした。特集の名前はPembaharu、インドネシア語で「刷新者」、何かを新しくしていく者、というような意味でしょうか。

以下のサイトで、それらの記事(英文)が読めます。

 ⇒ https://garlandmag.com/issue-20/

実際に記事を読んでいただければわかるのですが、インドネシアのとくに若い世代が、地域文化資源とAIを含む現代技術を融合させて、新しい時代のなかで、地域固有の文化資源に対してどのように新しい価値を付与させていくか、挑戦している姿がうかがえます。

たとえば、上の写真は、DiTenunという、地域の伝統的な織物にAIを活用させる試みについて書かれた次の記事から借りたものです。

DiTenun: Artificial intelligence technology for Indonesian traditional Weaving

DiTenunではAIを活用し、地域別に独特の様々なモチーフをAIに記憶させながら、織手、AIやITの技術者のほか、数学者、歴史家、繊維デザイナー、コミュニティ開発専門家、起業家、中小企業者、ソーシャルメディア、ブランディング専門家など様々な分野の人々が関わり、地域固有の伝統的な文化に対して、新しい現代のなかでどのような価値を付与し、固有価値を守っていくか、というアプローチを試みています。

換言すると、伝統的な文化価値を新しくして守る、ということでしょうか。そこにAIを活用する、という発想がとても斬新に思えました。

日本でAIと言えば、担い手が少なくなり、いなくなるなかで、人間の果たしてきた役割をどのように代替させるか、といった視点が多いような気がします。たしかに、インドネシアの地域でも、伝統文化は古い人たちのものという認識が強く、時代を超えた継承をどのように進めるかという点で、日本と同様の難題に直面しています。

日本では多くの場合、伝統文化を昔のまま継承する、ということが重視され、新しい試みは異端として排除される様子があります。伝統を変えるということは、それまで伝統継承を担ってきた人々の役目を軽視し、場合によっては否定する、といった感情的な世代対立にも至りかねません。そうして、世代間の対話が成り立たず、伝統文化が消えていってしまう、ということが起こってきたのではないかと思います。

DiTenunの記事を読みながら、そこでは、AIという最先端技術を使って伝統を否定するのではなく、伝統を尊重し、それをどのように新時代に生かして新たな価値を創り出すか、というところにAIを使うという発想なのです。何のためにAIを使うか、という発想が、日本で一般にみられるものとは相当に異なるところに、ある意味、衝撃を受けました。

DiTenun以外の記事でも、微生物やバクテリアによる作用を通じて、二度と再現できないようなバティックの色を生み出しすことで新たな価値を付与しようとする試みや、零細企業者とデザイナーが組んで、昔の人しか見向きもしないような古ぼけた製品に新たなデザインを組み合わせて、時代に合った新しいものづくりを志向する試みなど、読みながらハッとするような、新しい動きが紹介されています。

そこに共通するのは、伝統文化や伝統工芸に対する、若い世代の敬意です。ともすると、若者たちは、時代に乗り遅れた感のある伝統を蔑み、否定し、それらを新しいものに置き換えることを進歩だと認識しがちです。しかし、ここで紹介されるのは、新しい技術で伝統文化や伝統工芸に取って代わるのではなく、それらをどのように新しい時代のなかで守っていくか、そのために新しい技術をどのように活用できるか、という発想がもとになっています。

実際、先端技術と伝統文化の融合をテーマに、若者たちが欧米で学び、自分たちの地域の現場でそれを試行錯誤している様子があります。

私たちは、発展とか進歩とかいう概念を、もう一度作り直す時期に来ているのではないでしょうか。インドネシアの地域の片隅で、何のアドバルーンも挙げずに、政府の公的支援とも無関係に起こっている、彼らPembaharuたちの活動には、これからの世界の新しい時代のなかのたしかな希望が見えるような気がしています。

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