インドネシア統一地方首長選挙速報からの感想

6月27日は、インドネシアでの統一地方首長選挙の投票日で、数日前に急遽、全国で休日となりました。今回は、17州、115県、39市の計171自治体で地方首長選挙があり、とくに大きな混乱もなく、投票日を終えることになりました。

早速、いくつもの民間調査会社がクイック・カウントと称する、選挙結果速報を出してきました。今回は、どの調査会社もおおよそ同じような結果を示しており、大勢はほぼ決まりつつあるように思われます。

そんな状況を見ながら、ツイッター(@daengkm)にて、以下のような連続ツイートで個人的な感想を書きましたので、まとめて掲載します。ご参考まで。

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6/27投票のマカッサル市長選挙は、ほぼ全ての政党が推した候補者ペアを「空箱」が破る結果になる見込み。2020年に再選挙。選挙の詳細については以下を参照ください。
マカッサル市長選挙で「空箱」に敗れた唯一の候補ペアのポスター
こちらの記事も、よろしければご参照ください。
地方首長選挙で「空箱」と戦う(松井和久) | よりどりインドネシア
6/27投票の南スラウェシ州知事選挙は、2人のヌルディンが競う予想通りの展開だったが、前バンタエン県知事のヌルディン・アブドゥラ氏がゴルカル党幹部でサッカークラブのドンのヌルディン・ハリド氏を破り初当選する見込み。前者は九州大学で博士号を取り、日本と深い関係。

6/27投票の東ジャワ州知事選挙は、ナフダトゥール・ウラマ(NU)出身のコフィファ前社会大臣が当選。彼女と組んだ副知事候補で前トゥレンガレク県知事のエミル氏は立命館アジア太平洋大学にて博士号取得。

今後のインドネシアとの日本のアプローチは、中央政界だけでなく、日本と関わりを持つ地方首長をターゲットにしていくのが良い。ジョコウィ現大統領のように、一国一城の主を経験した地方首長から大統領へ登りつめるケースが出てくる。今注目されている有望政治家はみな地方首長なのである。

6/27投票の西ジャワ州知事選挙で、現在トップなのは、前バンドゥン市長のカミル氏。彼も、今後の活躍が期待されている地方政治家の一人。
東ジャワ州知事選挙で勝利確実のコフィファ、中ジャワ州知事選挙で勝利確実のガンジャルは、いずれも政党人として国会議員だったのが地方首長へ転身。中ジャワ州知事選挙でガンジャルに敗れたスディルマン・サイドは元エネルギー鉱産資源大臣でやはり中央から地方へ。
スハルト時代後の地方分権化が進行したインドネシアで、今、地方で実績を上げて中央へ向かう政治家の流れと、中央で経験を積んで地方へ向かう(いずれまた中央を目指す?)流れとがクロスしている。ジャカルタのアニス知事も後者で、教育文化大臣から知事へ。
地方首長として目立つような実績を積み、名声を得た者は、改革派とみなされ、既存政治に飽きやすい人々に今後の政治への期待を抱かせる。スラバヤ市長のリスマ、バンドゥン市長だったカミル、バンタエン県知事だったヌルディンらは、皆、そのように注目されてきた政治家である。
他にも、西ヌサトゥンガラ州知事だったザイヌル氏、バニュワンギ県知事のアブドゥル・アナス氏なども注目株。旧来的な地方ボスとしての地方首長という側面は完全に否定できないにせよ、良い統治や特色あるユニークな政策を展開できる地方首長に経営者としての能力を見出せるようになった観がある。

よりどりインドネシア第10号を発行

11月22日、情報ウェブマガジン「よりどりインドネシア」第10号を発行しました。今回は、以下の3本です。

 ・インドネシアで寛容性の高い都市はどこか?
 ・予測不能な「インターネット大国」インドネシア(大島空良)
 ・ジャワでもありバリでもあるバニュワンギ

寛容性の高い・低いは、多様性をどれぐらい許容できるかという指標ですが、ここでは主に、異なる宗教を受け入れる程度で計っているようです。インドネシアは「多様性の中の統一」を国是としていて、異なる様々な人々の存在を受け入れることを当然としていますが、近年、マジョリティであるイスラム教の政治利用や、スンニ派によるシーア派やアフマディアに対する迫害などが問題視されてきました。インドネシアで寛容性の高い都市、低い都市はどこなのでしょうか。2015年に続いて今回、そのランキングが公表されています。

人口2.5億人のインドネシアは、インターネット大国への道を歩んでいて、ネットビジネスの可能性は明るいものがあります。その実態を、とくに若者の対応を通じて見てみると、興味深い現象が見られます。そのなかには、インターネットを活用した新たな性風俗産業のやり方のような、新しい動きもあります。ジャカルタ在住の大島空良さんが、今回も興味深いレポートを書いてくれました。

ジャワ島の東端にあるバニュワンギは、ジャワの要素もバリの要素も併せ持つ、なかなかユニークな場所です。県知事が結構なやり手で、次の東ジャワ州知事選挙の副知事候補にもなっていますが、全国的にも注目される場所になっています。イベントを通じたバニュワンギの対外的な売り込みにも熱心で、年間イベントカレンダーを用意し、毎月のように何らかのフェスティバルを行っています。なかには、ケボケボアンと呼ばれる奇祭もあります。そんなバニュワンギを今回は紹介しています。

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バニュワンギの海岸からバリ島を臨む

インドネシアにコーヒー文化が根付き始めた

インドネシアはコーヒーでも名の知れた場所です。日本でよく聞くのは、トラジャ、マンデリンなどでしょうか。この30年で、インドネシアのコーヒーは大きく変わりました。もしかすると、東南アジアでコーヒー文化が最も根付く場所になるかもしれません。

私がインドネシアに行き始めた30年前、インドネシアでお茶のほうがコーヒーよりもメジャーでした。しかも、砂糖のたっぷり入ったお茶です。コーヒーもありましたが、ネスカフェなどのインスタントが主流で、これもやはり砂糖をたっぷり入れて飲みました。

その後、お茶は瓶入りの甘い茶飲料(Teh Botol、Teh Kotak、Teh Sosroなど)が主流となりました。コーヒーは、コーヒー+砂糖+ミルクパウダーの三位一体型インスタントコーヒーが主流となり、ジャカルタの渋滞緩和策Three in One(朝夕の決まって時間に決まった道路へ乗り入れるには自家用車1台に3人以上乗車する決まり。今は廃止)に因んで、3 in 1などと呼ばれていました。

おそらく10年ぐらい前からだと思いますが、ジャカルタでインドネシア産のコーヒーをパーパードリップで入れるカフェが現れ始めました(それまでのコーヒーは、コーヒー粉に熱湯を注いで、粉が沈殿した上澄みを飲むものでした)。スターバックスがインドネシアで展開し始めてすぐぐらいだったと思います。その後、スターバックスを模したカフェのフランチャイズチェーンが現れるとともに、居心地のいいカフェがジャカルタのあちこちにできていきました。

5年前、私はジャカルタに新たなカフェ文化が根付き始めた、と思い、エッセイも書きました。その後、カフェ経営者はバリスタ認証(どのように取得しているかは定かではありませんが)を競って取り始め、インドネシア各地のコーヒー豆をペーパーフィルターを使って淹れて飲ませるようになっていき、若者たちが集うようになりました。

インドネシアのコーヒー産地は、実はたくさんあります。それも、2000メートル級の高地が多く、各々の土地の土壌や気候の違いから生まれたアラビカ種が出回っています。

ガヨ(アチェ)、マンデリン(北スマトラ)、リントン(西スマトラ)、ランプン、トラジャ(南スラウェシ)、バリ、フローレス、パプアなどなど、インドネシア国内だけでいくつもの産地があり、それらがブランド化しています。ガヨ・コーヒーなどは、地理的表示保護(GI)認証をとって、ブランドを守り始めてもいます。

ジャワ島でも、南バンドンやバニュワンギなどで、オランダ植民地時代からに激賞された高品質コーヒーの復活やよりローカルなブランド化などの試みが次々出始めています。

一国の中でこれほどたくさんのコーヒーの銘柄を楽しめるところは、世界中でもあまりないのではないかという気がします。

この現象は当初、ジャカルタに限られていました。しかし、次第にスラバヤなどの地方都市へも広がっていきました。そして、今では、コーヒー産地にも、そこで採れたコーヒーを淹れて飲ませるカフェが展開し始めました。

アチェ州中アチェ県のタケゴンは、ガヨ・コーヒーの生産集積地ですが、この素敵な高原都市にも、ガヨ・コーヒーを楽しめる何軒かのカフェがありました。コーヒー商がカフェも経営している様子です。

この店にもバリスタの認定証がありました。

別の店は、アチェ州の州都バンダアチェの近くにも支店を出していて、そこでも美味しいガヨ・コーヒーを飲むことができました。

ガヨ・コーヒーも出している豆が3〜4種類あり、それを上澄み、ペーパーフィルター、サイフォンのどれで淹れるかを選ぶようになっています。もちろん、味はなかなかのものでした。

北スマトラ州ダイリ県の県都シディカランは、マンデリン・コーヒーの集荷地ですが、ここにも数軒のカフェがあり、若者たちで賑わっていました。

以前、コーヒー産地ではいいコーヒー豆はすべて輸出し、自分たちはインスタントコーヒーを飲む、とよく言われていたものでした。今では、コーヒー産地でも、いやそこでこそ、地元の人々が地元産のいいコーヒーを飲む、ということがインドネシアで起こっているのです。

植民地支配が長く、外部勢力に搾取されて従属させられている、という風潮が根強いインドネシアの人々が、自分たちの生産物を自分たちでも楽しむようになってきたことで、コーヒー文化がいよいよインドネシアの人々のものになり始めた、と思うのです。

そこで、来年あたり(夏ですかね?)から、インドネシアの複数のコーヒー産地をめぐり、コーヒー産地で地元の方々と一緒にコーヒーを味わうツアーをしてみたいと考えています!! もちろん、ジャカルタなどでのカフェ巡りもしたいと思います。

コーヒー産地はたくさんあるので、期間は1週間、毎年2〜3箇所の産地をまわることにしようかなと思っています。

この件で、何かご意見、アイディア、参加意思表明、協力表明などありましたら、メール、フェイスブック、ツイッター、このブログのコメント欄など、お気軽にお知らせいただければと思います。

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