2021年度予算案と今後の経済の展望(松井和久)

【よりどりインドネシア第76号所収】

インドネシアにおける新型コロナウィルス感染拡大は、当初、ピークと見なされた8月になっても収束の気配は見えず、2020年内、あるいは来年まで続くのではないかという声が出始めています。ジャカルタでは、セミロックダウンともいえる大規模社会的制限(PSBB)からの第1段階移行期に入ったものの、第2段階へ移れず、第1段階が延長されたままとなっています。

新型コロナウィルス感染状況をみると、8月22日時点での中央政府発表の感染者数は累計で15万1,498人、死亡者は同6,594人、回復者は同10万5,198人でした。 累計感染者数は世界第23位で、東南アジアではフィリピンに次ぐ数となっています。回復者率(累計回復者数/累計感染者数)の上昇と死亡者率(累計死亡者数/累計感染者数)の低下は一貫して続き、重症化の危険は低下傾向ですが、感染者数の増加スピードは落ちておらず、陽性率は12%台から13%台へ上昇しています。若年人口の多さや検査数の不足を考えると、政府発表の数字以上に、かなりの数の無症状感染者が存在すると予想されます。

2020年8月初め、2020年第2四半期(4~6月)のGDP成長率が発表され、当初の政府見込みよりも低いマイナス5.32%となりました。この値は、1998年の通貨危機のときに次ぐ低い成長率でした。

そんななか、2020年8月14日、ジョコ・ウィドド(通称・ジョコウィ)大統領は独立記念日演説とともに、2021年度予算案の概要を発表しました。新型コロナウィルス感染拡大対策と経済回復との両立を図ることを目的とし、GDP成長率4.5~5.5%を目指す内容となりました。

もっとも、事態はより一層、厳しい方向へ向かう可能性があります。とくに、今回の新型コロナウィルス感染拡大においては、インドネシアの経済活動の中心となるジャワ島のとくに都市部での経済的な落ち込みが厳しい様子がうかがえます。筆者自身は、2021年のGDP成長率目標を達成するのは難しいのではないかとやや悲観的にみています。

今回は、2020年第2四半期のGDP成長率の中身を見たうえで、ジョコウィ大統領の発表した2021年度予算案の要点を説明した後、ジャワ島のとくに都市部における貧困人口急増の状況について触れて、今後の経済について簡単に展望することにします。

(以下、本文へ続く)