【インドネシア政経ウォッチ】第80回 政府、工業団地開発に積極的関与へ(2014年3月27日)
2013年工業法の成立を契機として、政府が工業団地の量的・質的向上へ積極的に関わる姿勢を見せ始めている。インドネシアでは工業団地の9割以上が民間主導で開発されたことから、政府には、マレーシアのように政府主導で開発を進めた国に比べて土地収用が遅れ、用地価格も高めになったという認識がある。
政府は、14年から、品質基準を定めて工業団地を評価し、2年間有効の認定証を出すほか、優秀な工業団地を表彰することを検討している。また、ジャカルタ周辺から地方への産業分散を図る観点から、25年にジャワ島外の工業生産比率を40%以上にすることを目標に、特にジャワ島外での工業団地開発を促す意向である。
工業団地は現在、全国に74カ所・約3万ヘクタールあるが、そのうちジャワ島には55カ所・2万2,796ヘクタールが集中する。しかもそのほとんどはジャカルタ周辺に立地する。残りはスマトラ島に16カ所、スラウェシ島に2カ所、カリマンタン島に1カ所である。今後、少なくとも20カ所、合計約3万ヘクタールの工業団地開発が計画されている。
ジャカルタ周辺の工業団地拡張の余地は限られている。西ジャワ州カラワン県は、空間計画による工業向け用地2万ヘクタールが満杯となったとして、新たな工業団地向け認可を行わない方針を示した。全国有数の米作地でもある同県には、農業用地を確保する狙いもある。今後の工業団地開発では、まだ余地の大きい東ジャワ州、中ジャワ州、ジャワ島外への注目度が増すだろう。
ジャワ島外の工業団地は、経済特区(KEK)指定と絡めた展開となる。中国などが工業団地開発に興味を示しているが、経済特区といえども、投資企業自身がインフラ整備をせざるを得ないのが現状である。
インドネシアの工業団地開発は、実は1989年まで国営企業が担っていたが、需要増加に追いつけず、民間の参入を認めて対応した経緯がある。政府の積極的な関与が民間の事業意欲を圧迫しないことを願うばかりである。