【スラバヤの風-38】有機農業は広がるか

インドネシア農業の大きな問題の一つが土地の肥沃度である。かつて1970年代の米の自給を目指したいわゆる「緑の革命」では、高収量品種と化学肥料・農薬のセットで単収上昇が図られた。その影響は今も続き、化学肥料を多投する農業が一般化した。必要以上に化学肥料を投入すると、土地が肥料を保持する力が落ち、生産性が低下する。すると農家はさらに化学肥料の投入量を増やす。その連続が農業を支える農地の疲弊を起こす。

東ジャワ州でも、化学肥料に依存した農業からの脱却が図られている。まずは土を作り直すことから始める必要があり、化学肥料から有機肥料への流れが定着しつつある。近年、化学肥料価格が上昇し、農家収入を圧迫していることもその流れを促しており、一部には、価格上昇を理由に、人糞を使ったコンポスト化にも抵抗がない農家さえ存在する。

東ジャワ州南部のルマジャン県の農村でも、すでに有機肥料の利用が行われていた。この農村には、牛糞、鶏糞、山羊の糞をベースとしたコンポスト工場が3年前に建てられ、EM菌や他の菌を混ぜて発酵させて有機肥料を生産する。1袋30キロの有機肥料を毎月約4,000袋生産し、県内の6郡へ販売している。売価は1袋1万2,000ルピア(キロ400ルピア)で、一度に約1,000袋分を製造して5日で売り切る、というサイクルである。

農家レベルでも、牛糞などを発酵させて田畑へ撒いたりするが、この工場で製造された有機肥料を購入して使うケースも少なくない。あたかも、化学肥料を手軽に購入したように、有機肥料を購入する感覚である。しかし、持ち運びしやすい化学肥料とは違い、大量の有機肥料を圃場へ運ぶのはなかなか至難である。これが化学肥料から有機肥料への転換がなかなか進まない理由の一つとも指摘されており、配送方法に工夫が求められる。

他方、東ジャワ州での最大の有機肥料生産企業は、国営ペトロキミア・グレシック社である。石油化学工場が主であるこの企業は、炭素と窒素の比率であるC/N比、酸性・アルカリ性の度合いを示すpH値、含水率などの一定基準を満たしたうえで、石灰を独自の配合で加えた有機肥料を毎月1,000トン生産している。各県に工場があり、ルマジャン県にも3工場ある。農家にはキロ500ルピアで販売する。

有機肥料の生産が進む東ジャワ州ではあるが、果たして、州政府の望み通りに有機農業は広がっていくのだろうか。バトゥ市のリンゴのように、有機肥料から化学肥料へ戻ってしまったケースもある。後継者不足による農業の持続性の問題も含め、有機農業を広げるための明確な政策支援が必要な気がする。

 

(2014年12月5日執筆)

 

【ルマジャン】クレンセンガン・カンビン

4月7日、スラバヤから片道4時間かけてルマジャンへ日帰り出張した。

ルマジャンでの用務も無事終わり、スラバヤへ戻る前に、お世話になったルマジャン県公共事業局の皆さんが食事に誘ってくださった。

場所はルマジャンの中心部にあるDepot Kemayoranという小食堂。名物は何かと聞くと、「クレンセンガン・カンビン」(Krensengan Kambing)とのこと。赤ワケギ、ニンニク、コリアンダー、胡椒、ナツメグなどを使った甘辛の汁で煮込んだ料理である。これでお値段は2万ルピアだった。

これを白いご飯にかけて食べる。山羊肉は柔らかく、汁とよくなじんで、ご飯との相性も絶妙である。うーん、至福のとき。午後4時過ぎという中途半端な時間ではあったが、用務でエネルギーを消耗したせいもあり、しっかり完食した。

付け合せは、毎度おなじみの面々。

クレンセンガンは、東ジャワではわりとどこでも食べられる料理であるが、何も期待していなかったルマジャンで食べられたということも高評価につながったのかもしれない。

お世話になったルマジャン県公共事業局の皆さんらと、Depot Kemayoranの前で。