【インドネシア政経ウォッチ】第115回 分配重視論への警戒(2015年1月15日)

ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)政権は、前半は成長よりも構造改革に取り組み、その成果を後半の成長につなげるというシナリオを描いている。すなわち、今後5年間の経済成長率を2015年の5.8%から19年には8%に引き上げるとともに、階層間の所得格差の指数であるジニ係数を0.41から0.39へ引き下げるとしている。

成長か分配か。これはインドネシアの経済開発論争の中心テーマである。過去50年を振り返ると、経済状況が苦境のときに成長重視論が強くなり、経済成長が進むと分配重視論が強くなる傾向がある。成長重視論は市場メカニズムの役割を強調するもので、インドネシア大学経済学部を中心としたアメリカ留学組が論陣を張った。

一方、分配重視論は貧困層への配慮を強調する立場であり、主にガジャマダ大学の農村経済学者らが論陣を張り、欧米流の手法に批判的な態度を示してきた。とくに外資に対しては、成長重視論は開放・活用を、分配重視論は制限・警戒を主張している。

構造改革の必要性はこれら両者に認知されているものの、その内容には違いがある。成長重視論は効率性を柱とした構造改革で、市場メカニズムが動くことで市場の逸脱を正せるとする。一方、分配重視論は公正性を重視した構造改革で、貧富格差の是正のために市場メカニズムを抑制して格差縮小を図るべきであると主張する。

分配重視論者のなかには、ユドヨノ政権の過去10年は成長重視だったが、ジョコウィ政権は分配重視に転換させると期待する向きもある。彼らは、長期的には資本収益率が経済成長率よりも大きくなり、富の偏在による経済的不平等が高まると論じる、トマ・ピケティの『21世紀の資本論』の議論をジョコウィ政権の姿勢にかぶせているように見える。

過去を振り返ると、分配重視論が前面に出てきたときには、富裕層(とくに華人)への反発、イスラムの政治利用傾向、社会不安の拡大が見られた。世界経済や治安情勢の動き次第では、これらが再起する可能性も念頭に置く必要がある。

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