食品加工業振興に関するスラバヤ出張

11月26~30日、スラバヤへ出張してきました。今回は、JICAによる「東ジャワ州の中小食品加工業振興に向けた食品加工技術普及・実証事業」の一環で、日本の中小企業による食品加工技術普及・実証のお手伝いでした。

東ジャワ州は、インドネシアのなかでも、中小企業レベルでの食品加工業の一大中心地であり、州政府の開発目標においても、農林水産品加工による産業発展を重視しています。この普及・実証では、とくに油を使用しない食品加工機械の技術普及に焦点が当てられています。

ご承知の通り、インドネシアでは、食品製造における油の使用量が多く、とくに、スナック菓子などではほぼすべてに使われていると言っていい状態です。しかも、その油のほとんどはパーム油であり、しかも同じ油を何度も使うことが一般的です。このため、油の摂取量が必然的に多くなり、健康的な食品がなかなか出回らない状態にあります。

そこで、日本で食品加工機械を製造している中小企業が、自身の持つノンオイルでの菓子製造技術をインドネシアで普及・実証したいという熱意を持ち、1年間、本案件で機械と技術の紹介・普及活動を行ってきました。

機械が設置された東ジャワ州食品・飲料・包装工業支援所では、ワークショップもたびたび開かれ、たくさんの中小企業者が参加し、ノンオイルでの菓子製造の実際を体験することができました。なかには、トウモロコシや米などの材料を持参し、試作した参加者もいました。また、東ジャワ州内だけでなく、他州からも視察者が相次ぎました(今回の滞在中に、南カリマンタン州商工局から視察団が来ていました)。

こうしたなかでの、私の役目は、東ジャワ州商工局職員に対して、11月29日の午前中、食品加工業との関連で日本の地域産業振興の事例を紹介する、インドネシア語での講義を行うことでした。

食品加工業の振興に当たっては、原材料を供給する農林水産業や、製品を販売する商業・マーケティングとの関係を常に意識することが重要であるというメッセージを伝えるために、日本の地域振興の歴史、地域おこしの事例、農商工連携の事例、6次産業化の事例などを紹介しました。

食品加工機械の導入や施設の整備に関して、日本では様々な政府からの補助金や助成制度があることを紹介したうえで、参加者には、インドネシアでの現状についても議論してもらいました。

制度上は、一定の審査を経たうえで、中小企業が購入した機械・機器に関して、国内産機械価格の30%、輸入機械価格の25%を補填するという制度が工業省にあるのですが、その予算総額が2017年度はわずか110億ルピア(約1億円)程度しかないということで、活用するのがなかなか難しい現状があります。

この手の案件で日本の技術や機械を紹介しても、結局、コストがかかるという理由で、案件終了後、次の展開へ向かわずに技術や機械が放置される、という話をよく聞くので、そのような話をあえてしたのです。

東ジャワ州商工局は、幸いにも、今回の技術や機械を何とかして活用したいという意欲を強く持ち、モチベーションも高い様子でした。日本側も、引き続き、価格低下への努力を続けると言明し、インドネシア側も、機械・機器の購入を促す政策的措置を検討していくことを相互に確認できました。

今回は珍しく、滞在中に体調を悪くしてしまい、万全の状態での講演とならなかったのですが、他のチームメンバーの皆様の助けを受けて、何とか用務を果たすことができました。

それにしても、食品加工業振興の議論をしながら、「インドネシアでは、まだ機械をどう使うかのレベルにとどまっている」ことを痛感しました。本当に食品加工業を振興させたいのなら、食品加工機械を製造する工業をどう作っていくかを考える必要があるからです。

日本の食品加工機械メーカーは、大企業だけでなく、中小企業が有力な担い手となってきました。今のインドネシアは日本の1970年代に似ていると思われますが、その頃の日本には、数多くの中小食品加工メーカーが存在し、日本の食品加工業を支えていました。

今のインドネシアにも、食品加工機械メーカーは存在しているといいますが、機械ユーザーのニーズに合わせて、オーダーメイドで機械を造れるメーカーはほとんどありません。そんな企業が増えていったら、インドネシアの食品加工業は自ずと発展していけるようになるのではないか。もしかしたら、たとえば、同じ東南アジアのタイは、もうそのレベルに来ているのかもしれません。

2017年のインドネシア出張は今回で最後になると思います。次回のインドネシア出張は、2018年1月末に、別の案件でジャカルタ1週間の予定です。