【活動報告】インドネシアのオムニバス法について講演(2020年11月4日)

2020年11月4日、国際機関日本アセアンセンターのASEAN最新事情ウェビナーにおいて、「インドネシアにおける投資誘致のためのオムニバス法(雇用創出法)とその影響」と題して、講演しました。

オムニバス法は2020年10月5日に国会で成立後、大統領署名を受けて2020年11月2日に発効したばかりであり、まだホットなタイミングでの講演となりました。

本講演で使用した資料は、下記のサイトよりダウンロード可能です。ご利用ください。

https://www.asean.or.jp/ja/invest-info/eventreport-2020-13/

また、オムニバス法の条文詳細及び分析やインドネシア政治・経済・社会に関するご質問、ご相談、その他の問い合わせをお受けいたします。ご希望の方は、以下のアドレス宛へメールにてご連絡ください。
Email: matsui@matsui-glocal.com

【ぐろーかる日記】インドネシア政府が情報サイト『JAIPONG』を開設

インドネシア政府は、日本からインドネシアへの投資促進を目的として、日本語とインドネシア語でインドネシアのビジネス情報を提供する情報サイト『JAIPONG』を開設しました。リンクは以下の通りです。

JAIPONG

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【インドネシア政経ウォッチ】第147回 問われる外資規制緩和の本気度(2016年2月25日)

政府は2月11 日、東南アジア諸国連合(ASEAN)・米国会議に出席するジョコ・ウィドド(ジョコウィ)大統領の訪米を前に、経済政策パッケージ第10 弾として投資ネガティブリスト(DNI)の概要を公表した。DNIは2年に1度改訂されるが、今回の改訂の目玉は、外資出資比率の大幅緩和である。

とりわけ、これまで国内資本のみとされてきた業種を含む35 業種で100%外資が認められたことは驚きである。対象となった従来の外資参入禁止業種には映画撮影・制作・配給および関連設備、一般・歯科・伝統医療行為、年金運用などがあり、これまで地場中小企業向けだったワルテル(貸し電話・インターネット屋)でも外資100%が認められた。

それら以外では、冷蔵保管倉庫(従来は33%)、レストラン・カフェ・バー(同49%)、スポーツ施設(同 49%)、映画撮影・吹替・複製(同49%)、クラムラバー製造(同49%)、病院経営コンサルティング・クリニックサービス(同67%)、薬品原材料生産(同85%)、危険物以外のゴミ処理(同95%)、高速道路運営(同 95%)などでも100%外資が認められた。

また、外資出資比率が67%に引き上げられたのは、 冷蔵保管倉庫以外の倉庫業(従来は33%)、旅行代理店・教育訓練(同49%)、私立博物館・ケータリング(同51%)、建設業ほか19業種(同55%)などである。

ただし、地場中小企業を保護するため、外資の最低出資額は100 億ルピア(約8,500 万円)以上とされた。 電子商取引(EC)では1,000 億ルピア以上ならば外資100%が認められるが、それ未満は67%までとされ た。

今回のDNIは、大統領の訪米直前という、関係省庁の反発を抑える絶妙のタイミングで発表されたが、 すでに国内業界団体からは外資支配を警戒する声が上がっている。投資調整庁はこれまで、外資の最低払込資本額などを内規でたびたび変更しており、後出しで様々な条件を加えて再規制する可能性も否定できない。 国内のナショナリズム感情の動きを踏まえ、外資規制緩和に対する政府の本気度が試されることになる。

 

(2016年2月25日執筆)

 

【スラバヤの風-46】ボヨラリは牛乳の町から繊維の町へ

中ジャワ州南東部、ソロ市のすぐ西隣の高原地帯、ムラピ火山の東側にあるボヨラリ県は「牛乳の町」として知られる。牛乳生産は1980年代に始まり、2013年時点で、ボヨラリ県の乳牛頭数は8万8,430頭、年間牛乳生産量は4万6,906トンであり、頭数で全国の約14.5%、牛乳生産量で同約8%を占める。たしかに、ボヨラリの街中には牛乳を売る店があちこちに見られ、牛乳を使ったドドール(羊羹の一種)も売られている。

 

一見するとのどかなボヨラリの風景だが、ここ数年、繊維・縫製を中心とした投資が急増している。投資調整庁(BKPM)のホームページでも、繊維・縫製産業の投資先としてボヨラリ県を紹介している。

ボヨラリ県投資・統合許認可サービス局によると、2006年時点で、同県の国内投資実績は6件、4,073億ルピアに過ぎなかった。ところが、2008年に460件が一気に進出した後は、2009年に621件、2010年に767件、2011年に859件、2012年に1,056件、2013年に938件、そして2014年に804件の国内企業が新たに進出し、2014年時点で計5,513件、1兆1703億9400万ルピアとなった。ただし、国内企業の投資件数は増えたが、その多くは比較的小規模の投資だったことが分かる。

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ボヨラリ県投資・統合許認可サービス局にて

ボヨラリ県への外国投資は、1995年に2件、2001年に1件進出して以降、2007年まで全くなかった。それが2008年、2010年、2012年、2013年に1件ずつ進出した後、2014年になって一気に4件へ増加した。その結果、外資系企業は現在11社となり、そのほとんどが韓国系などの繊維・縫製である。このように、ボヨラリ県は投資ラッシュとなっているが、工業団地はまだなく、投資企業は県の空間計画で定められた工業ゾーンに立地することになる。

実は、2013年から、韓国政府による援助の下、ボヨラリ県に繊維・縫製を主とする敷地面積約500ヘクタールの工業団地を建設する計画があった。しかし、計画が公になるとすぐに地価が上昇し始めた。2010年頃は1平方メートル当たり2万ルピア(約180円)だったのが、2014年には 50万ルピア(約4,630円)へ急騰した。このため、地権者がなかなか用地買収に応じず、結局、韓国政府は協力の継続を断念するに至った。ボヨラリ県政府は、韓国政府に代わる新たな事業者を探して、工業団地建設を継続する意向である。

ボヨラリ県は投資許認可のワンストップ・サービスを完備し、建築許可(IMB)と妨害法許可(HO)以外の許認可手続は無料化した。ボヨラリ県への繊維・縫製企業進出はまだ続くだろうが、一部ではすでに、ボヨラリ県から周辺のスラゲン県などへ工場を再移転する動きも見られる。ボヨラリ県とその周辺県との投資誘致競争は熱を帯びている。

 

(2015年3月29日執筆)

 

【スラバヤの風-44】中国のスラウェシへの投資攻勢

中国はインドネシアへの投資よりも貿易を選好する。筆者はそんな印象を持っていたが、昨年後半から様相が変わり始めた。2014年第4四半期の中国からの投資額は5億ドルとなり、シンガポール、マレーシア、日本に次いで4番目、初めてトップ5に顔を出した。

とりわけ、スマトラ、カリマンタン、スラウェシといったジャワ島以外の地域への製錬、セメント、電力などインフラ関連投資が目立ち、投資調整庁は2015年には中国からの投資がさらに伸びると見ている。地方への投資分散を掲げるジョコウィ政権は大歓迎である。

2015年に中国からの大型投資が見込まれるのは、スラウェシ島である。まず、中国の徳龍ヴァーチュー・ニッケル公司は、東南スラウェシ州コナウェ県に50億米ドルを投じてニッケル製錬工場を建設する。第1期は年産60万トンだが、第2期で120万トン、第3期で120万トンを追加し、最終的に年産300万トン体制を目指す。

また、南スラウェシ州バンタエン県には、中国企業8社がニッケルやマンガンなどの製錬工場を各々建設する予定で、投資額の合計は40億米ドルになるものとみられる。スラウェシ島はニッケルの主産地であり、中国からのこれら巨大投資は、政府の未加工鉱石の輸出を禁止し、国内での製錬を奨励する政策に沿った動きである。

一方、2015年1月、北スラウェシ州政府は中国交通建設公司との間で、ビトゥン特別経済地域(KEK)開発に関するMOUを締結した。インドネシアのなかで地理的に最も東アジアに近いビトゥンは、国内外物流のハブ港としての役割を期待されるほか、州都マナドとを結ぶ高速道路建設、及びその沿線での工業団地開発が計画されている。ビトゥン特別経済地域に対する中国からの投資額は、インフラ、海洋、薬品など少なくとも3兆ルピア(約23万米ドル)が見込まれている。

中国はなぜスラウェシや東インドネシアを重視するのか。それは、南シナ海から南太平洋へ抜けるルートを確保するためである。実際、そのルートの先にある東ティモールでは、政府庁舎の建設などを中国が丸抱えで進めている。東インドネシアでのプレゼンスを高める同様の戦略は、韓国やロシアも採っていたが、中国が一歩先んじたようである。

とはいえ、中国からの投資がすべて順調なわけではない。西スラウェシ州では、スラウェシ島全体の電力需要を賄える規模の水力発電事業に中国が参入したが、ダム建設をめぐって地元住民の反対にあい、撤退を余儀なくされた。

日本はこれまで、人材育成などの経済協力をスラウェシや東インドネシアで地道に続けてきたが、日系企業の大半がジャワ島内のジャカルタ周辺に立地することもあり、中国に大きく遅れを取ってしまったことは否めない。

 

(2015年2月28日執筆)

 

【インドネシア政経ウォッチ】第138回 経済政策パッケージと保税物流センター計画(2015年9月25日)

ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)大統領は9月9日、「9月1日付経済政策パッケージ」を発表した。この経済政策パッケージは国内製造業の競争力強化、戦略プロジェクトの実施迅速化、不動産部門への投資促進を主な目的とする。

重複等のある154規則のうち89規則を整理し、17政令案、11大統領令案、2大統領指令案、63大臣令案を準備するとともに、電子化を軸とした手続簡素化を進め、これらの規制緩和を2015年10月までに終了させるとしている。加えて、中銀からも金融部門での政策パッケージが発出された。

これらのなかには、輸出向けファイナンス強化、特定産業用ガス価格設定、工業団地開発、協同組合経済機能の強化、貿易関連許認可の簡素化、漁民向けLPG政策、牛肉などの食品価格安定、低所得者保護・村落経済活性化、貧困者向けの米の2ヵ月分配給追加などが含まれる。このほか、外国人観光客がパスポートだけで外貨預金口座を開設できる措置も検討されている。

もっとも、政府発表が具体性に乏しかったためか、市場の反応は鈍く、通貨ルピアの軟化傾向に変化はなかった。

そんななか、政府は9月17日、保税物流センター(PLB)計画を発表した。輸入原材料や輸出向け製品をまとめて一時保管する施設で、輸入原材料の関税や輸入税を免除するため、保税貯蔵に関する政令2009年第32号を改訂する意向である。これにより、輸入原材料の保管場所をシンガポールやマレーシアなど国外から国内へ移すよう促す狙いだ。

所在地については、石油ガスはバンテン州メラック、パイプや石油掘削用リグは東カリマンタン州、繊維原料の綿花や牛乳用原乳は西ジャワ州ジャバベカなどが具体的な候補地名として挙げられている。PLBを製造現場の近くに立地させることで、物流コストの削減を意図している。

自前での輸出入で負担の大きい地場中小企業には朗報かもしれないが、ASEAN全体で物流を考える日系企業などにとって魅力的かどうかは、物流コストが実際どれほど下がるかなどを注意深く見ていく必要がある。

 

(2015年9月22日執筆)

 

【スラバヤの風-01】ジャワ島で最も成長率の高い東ジャワ

交通渋滞、物流遅滞、最低賃金上昇、工業用地不足。ジャカルタ周辺でのビジネス環境が急速にコスト高、非効率になってきたという声をよく聞くようになった。2013年1月にジャカルタが大洪水に見舞われて以降、インドネシア政府・財界が明示的にジャカルタ周辺から他地域への産業移転を促す発言をしている。ジャカルタ周辺への一極集中を和らげ、他地域での経済発展を促進させる動きが本当に起こるのだろうか。

ジャカルタ周辺の次はどこか。まず、思い浮かぶのが、国内第二の人口を持つスラバヤ(311万人)を州都とする東ジャワ州であろう。人口3747万人を擁する東ジャワは、実はジャワ島で最も成長率の高い州である。

経済規模は884兆ルピア(2011年)であり、全国の14.7%、ジャワ島の25.4%を占める。 経済成長率は2009年以降、ずっと全国を上回り、2011年は7.2%(GDP 6.5%)、2012年は7.3%(同6.2%)となった。産業別(2012年)では、商業・ホテル業(10.1%)、運輸・通信業(9.5%)、金融業(8.0%)、建設業(7.1%)が高成長で、製造業(6.3%)が追う。

需要面では、東ジャワから他州への移出が20.5%と大きく伸びる一方、 移入も12.6%と急増した。州経済に占める民間消費のシェアは67.5%と大きく、依然として州経済を支える主役となっている。

東ジャワへの投資実施件数・額は2012年に大きく増えた。外国投資は2011年の208件、13.1億ドルに対して2012年は403件、23億ドル、国内投資は同じく157件、9.7兆ルピアから289件、21.5兆ルピアへ増大した。

ジャワ島内の他州では投資件数が減少傾向にあるが、東ジャワは唯一、外国・国内投資とも増加している。もっとも、2012年のGRDPにおける総固定資本形成(投資)成長率は3.68%と低く、投資の経済成長への効果が表れるのは2013年以降になるものとみられる。

東ジャワ州政府は、自州が全国で最も投資効率の高い州であると自負する。2011年の限界資本係数(ICOR)は全国最低の3.09、ジャカルタや西ジャワよりもかなり低い。最低賃金上昇があるとはいえジャカルタ周辺よりは低く、渋滞もまだ少ない。既存の工業団地は埋まってきているが、新規建設計画も進んでいる。 こうした東ジャワへジャカルタ周辺から産業移転が本格的に進むのか、大いに注目されるところである。

中ジャワは最も投資しやすい州を目指す

先週、北スマトラ州に続いて、6月18〜19日に中ジャワ州を訪問した。中ジャワ州投資局のスジャルワント長官は、「中ジャワはインドネシアで最も投資しやすい州を目指す」と胸を張った。

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中ジャワ州の特色としては、全国最低レベルの最低賃金、極めて少ない(というかほとんどない)労働争議、豊富な資源ポテンシャル、などが挙げられるが、それらはよく知られた特色である。これら以外に、他州には見られない特色があった。

それは、官民一体となって、投資をサポートする体制を整えていることである。州レベルでは、政府と商工会議所が一緒になって投資対策チームを作り、常に県・市政府とコンタクトし、モニタリングする体制になっている。たとえば、ある県で投資を阻害する問題が起こったら、すぐに州のチームも動くのである。とくに、すでに投資した企業が安心して活動できる環境を維持することが狙いである。

それだけではない。州政府は、州内のすべての県・市を対象としたパフォーマンス評価チームを結成し、毎年、表彰している。この評価チームは実業界・学界・市民代表から構成され、政府関係者が含まれていないのがミソである。チームは、実際に現場で行政サービスや許認可事務の状況を把握し、評価の重要な要素としている。

これによって、中ジャワ州の県・市の間で、行政サービスや許認可事務の簡素化を含む善政競争が起こっている。投資を呼び込むために、許認可に要する期間の短縮やサービスの改善にしのぎを削っている。各県・市の創意工夫で、様々な新しい試みが生み出される。たとえば、従来、多くの県・市政府は自己財源収入を確保するために、わざと許認可を面倒にする傾向さえあったが、競争意識によって、それが大きく改善へと向かっているという。

以前、ジョコウィ大統領がソロ市長だったときに、このパフォーマンス評価でソロ市は3年連続で州内第1位に輝いた。そうした実績を引っさげて、ジョコウィは中央政界へ進むことになったのである。ジョコウィが中ジャワ州から去った後は、各県・市が毎年入れ替わり立ち替わり第1位を占めるようになり、競争状態に拍車がかかっている。中ジャワ州の善政競争マネジメント能力の高さがうかがえる。

このように、州全体での投資へのサポート体制ができており、「インドネシアで一番投資しやすい州になる」という言葉もあながち嘘ではない気がしてくる。

とはいっても、日本人駐在員が中ジャワ州に駐在するには、日本的な要素が少ないことは否めない。中ジャワ州には日系の工業団地はまだない。州都スマランには日本料理店もほとんどない。ゴルフ場はあるが、日本人向けの娯楽施設も限られている。この辺は今後の課題となる。

しかし、中ジャワ州は日本に最もなじみのある州の一つなのである。実は、技能実習生や研修生を日本へ最も多く送り出しているのが中ジャワ州とのことである。中ジャワ州のどこへ行っても、日本での経験を持つ若者たちが存在する。日本企業は、そんな彼らを生かすことができるのではないか。

技能実習生や研修生を単なる低賃金未熟練労働力ととらえず、将来の日本企業のインドネシア投資、あるいはインドネシアでのOEM生産などを念頭に、彼らとの関係を戦略的に作っていくことがこれから重要になってくるだろう。実際、日本の中小企業がインドネシアへ来て、自分たちと一緒に低コストで材料や部品を作ってくれるインドネシアの中小企業を探しているという話もある。もしそうならば、戦略的に技能実習生や研修生を日本で活用して、次のステップへつなげることが有用ではないだろうか。

そんな場としても、中ジャワ州はなかなか有望なのではないかと思う次第である。

中ジャワ州に関して、何かお問い合わせになりたい方は、私まで遠慮なくご連絡いただければ幸いである。日本でもっと中ジャワ州を勝手にプロモートしたいと思っている。

 

【インドネシア政経ウォッチ】第127回 企業移転と地方の投資誘致競争(2015年4月9日)

交通渋滞、洪水、コスト上昇、労働争議など投資環境の悪化を嫌う企業が、ジャカルタ周辺から他の地域への企業移転、工場増設に動いている。

その主力は国内企業である。2014年の州別の国内からの直接投資(DDI)実績で、第1位は、38兆1,320億ルピア(約3,530億円)の東ジャワ州である。東ジャワ州は、実は12年から第1位を占めている。西ジャワ州は海外からの直接投資(FDI)実績で第1位だが、DDIでは東ジャワ州に次ぐ第2位となっている。また、中ジャワ州も13年から投資実績が急増している。

一方、ここ数年のジャワ島における各県・市の最低賃金上昇率を見ると、工業団地の集中する州都周辺・北海岸が高く、それ以外の南部では相対的に低い。州内で「南北問題」とでもいうべき経済格差が拡大する気配がある。その最低賃金水準が低い南部へ労働集約型産業の投資が進出を加速しているのである。

例えば、中ジャワ州南東部のボヨラリ県のDDI実績は、12年は1,056件・2,733億ルピア、13年は938件・1兆1,217億ルピア、14年は804件・1兆1,704億ルピアと急増したが、その大半は繊維・縫製関連投資である。中には、ボヨラリ県から周辺の別の県へ企業移転・工場増設するケースさえ出ている。FDIでも、韓国系のパン・ブラザース・グループが先導する形で、他の韓国系繊維企業が企業移転先を物色している。

こうした状況下で、中ジャワ州や東ジャワ州の各県・市では、首長が率先して用地買収や従業員確保に当たったり、許認可手続きの簡素化を進めたりして、投資誘致競争を繰り広げている。投資許認可手続きのワンストップ・サービスはすでに各県・市が導入しており、各手続きの料金と所要日数は明記され、その低料金化と日数短縮で競い合う。中には、手続きをすべてオンラインで行い、許可証発行の最終手続き時にオリジナル書類を提出すればよいところもある。

各県・市と投資調整庁(BKPM)とのオンライン化も始まり、地方の投資誘致競争にいっそう拍車がかかりそうである。

【インドネシア政経ウォッチ】第108回 外交デビューは積極的な投資セールス(2014年11月13日)

ジョコウィ大統領の外交デビューは、中国・北京で開催中のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議となった。何よりも、新大統領としての自分を各国首脳に知ってもらうことが最も重要である。

英語が流暢なユドヨノ前大統領とは対照的に、ジョコウィは各国首脳との会談でインドネシア語を使った。彼は英語が大丈夫なのかという不安がよぎったのも束の間、トップ・ビジネスマンが集った最高経営責任者(CEO)サミットの場で、映像や画像を使い、原稿なしの英語でプレゼンテーションを行った。インドネシア語を使ったのは、あくまでも、国家や政府を代表する公式会談では自国語を使うという原則に従ったにすぎなかった。

CEOサミットでのプレゼンテーションで、ジョコウィはインドネシアの今後の発展可能性を示しただけでなく、「インドネシアに投資をするなら今しかない」「チャンスを逃すな」と攻めの姿勢を貫いた。就任して間もないのに、新人として控えめに振る舞うことなく、百戦錬磨のCEOを相手に積極的な投資セールスを行ったのである。

ジョコウィは、インドネシアの全在外公館に対して、インドネシアを売り込むセールスマンの役割を果たし、具体的な成果を出すよう求めている。自ら率先して投資セールスを行い、在外公館が続かざるを得ない雰囲気を作るのがジョコウィ流といえる。

しかし、いくらセールスをしても、肝心の投資許認可手続きが改善されなければ、全く意味がない。もちろん、ジョコウィはそれを重々承知している。彼が大統領に就任後、最初に抜き打ち視察を行ったのが投資調整庁(BKPM)であったことは記憶に新しい。それがあったからこそ、今回、北京での投資セールスが意味を持ってくるのである。

外資企業からはジョコウィ政権のナショナリズム的性格を懸念する声も出ているが、今回の投資セールスはその懸念を払拭しようとするものでもある。ただし、外資ならば何でもよいというわけではない。外資側にも、「インドネシアにとってのメリットは何か」をしっかり説明することが求められてくるだろう。

【インドネシア政経ウォッチ】第65回 ジャワ島の14年最低賃金を読む(2013年11月28日)

11月になり、各県・市の2014年最低賃金が決定された。政府は14年の最低賃金に関して「消費者物価上昇率+10%以下(労働集約産業は+5%以下)」という目安を提示したが、今年ほどではないにせよ、14年も20%前後の高い上昇率となった。

ジャワ島内では11月25日までに、112県・市のうちバンテン州セラン県を除く111県・市の14年最低賃金が決定した。最高が西ジャワ州カラワン県第3グループ(鉱業、電機、自動車、二輪車など)の281万4,590ルピア(1円=112ルピア、以下同じ)、最低が中ジャワ州プルウォレジョ県の91万ルピアであり、その差は3倍以上ある。

地域別にみると、ジャボデタベックと呼ばれるジャカルタ周辺の県・市が235万ルピア以上だが、そのすぐ後には、東ジャワ州スラバヤ周辺が続いている。スラバヤ周辺の最低賃金はもはや決して低いとは言えなくなった。スラバヤ周辺に続くのが西ジャワ州バンドン周辺で、このあたりで最低賃金200万ルピアの線が引ける。

一方、中ジャワ州とジョクジャカルタ特別州は相対的に最低賃金がまだ低い。最高でも前者ではスマラン市の142万3,500ルピア、後者ではジョクジャカルタ市の117万3,300ルピアにとどまる。特に、中ジャワ州の中央から南側に立地する9県では最低賃金が100万ルピア未満である。

ちょうど100万ルピアは、中ジャワ州に4県、東ジャワ州南西部に6県・市、西ジャワ州に1県ある。これらはいずれも、各州内で開発の遅れた地域に属しており、最低賃金水準から地域内の経済格差の様子が見えてくる。

昨今、ジャカルタ周辺の工場が中ジャワや東ジャワへ移転する動きが見られるようになったが、一般に、最低賃金の低い県・市では、投資認可関連手続きの経験が不足しており、企業設立などで時間的・資金的なロスが生じる可能性がある。企業進出に当たっては、最低賃金水準だけで決めるのではなく、行政サービスの質やインフラ状況などを総合的に判断する必要があるのは言うまでもない。

【インドネシア政経ウォッチ】第63回 国際収支安定のための外資規制緩和(2013年11月14日)

今年は3年に1度の投資ネガティブリストの改訂が行われる年である。しかし、当初、10月ごろと見られていた改訂リストの発表は遅れ、年末になりそうだ。外資規制を緩和したい経済調整大臣府や投資調整庁と、外資規制を強化して国内企業の育成を目指したい各省庁との間で、さまざまな駆け引きが行われている様子である。

昨今の厳しい経済状況で、改訂リストはより規制を緩和する方向へ向かいそうだ。何よりも今、政府に求められるのはマクロ経済の安定であり、軟化する通貨ルピアのしなやかな防衛である。そのためには、国際収支の安定が不可欠であり、経常収支の赤字を埋め合わせる資本収支の黒字が必要になる。そして、出入りの素早い証券投資よりも直接投資の増加が最重要になる。国際収支の安定のためにこそ、外資規制緩和が必要となるのである。

先週、ネガティブリスト改訂の内容が一部明らかにされたが、大きく2つの注目点がある。第1に、事業効率化のために外資を活用するという点である。なかでも、空港・港湾の管理運営に100%外資を認めるなど、なかなか進まないインフラ整備・効率化で外資を活用する意向が示された。インフラ投資に参入したい外資は多く、歓迎されよう。

第2に、輸出指向型外資をより重視したことである。消費活況の続くインドネシア国内市場を目指す外資よりも、インドネシアを生産拠点とし、輸出することで国際収支の安定に寄与する外資を求めている。輸出指向型外資への優遇策は、1980年代後半~1990年代前半に採られ、労働集約型産業が発展したが、その後競争力は低下した。今後の輸出産業としては二輪車・自動車と油脂化学が期待される。

早速、識者からは経済における外資シェア拡大への危惧が現れた。しかし政府は、外資への依存度を高めるというより、国内企業に外資との競争を促そうとしているようである。インドネシアの自信の表れといえるが、国内企業がその意図を汲み取って行動できるかが課題である。

【インドネシア政経ウォッチ】第59回 投資殺到のバンタエン県(2013年10月17日)

南スラウェシ州にバンタエンという名の県がある。面積395平方キロメートル、人口18万人という小さな県で、農業が主産業である。ジャカルタなどでは知られていないが、このバンタエン県に今、外国投資が殺到している。

10月のAPEC首脳会議に合わせて来訪した中国の習近平総書記とユドヨノ大統領との間で、さまざまな協力協定が締結されたが、そのひとつが、中国のYinyiグループによるバンタエン県のニッケルおよびステンレス精錬所への投資である。総額23兆ルピア(約2,000億円)で、300ヘクタールの工業用地に2015年から精錬所を建設する。Yinyiグループ以外にも、中国系2社を含む5社がニッケルやマンガンなどの精錬所への投資を計画している。

バンタエン県はニッケル鉱やマンガン鉱の産地ではない。しかし、南スラウェシ州北部から東南スラウェシ州北部にかけてニッケル鉱床があり、これまで主にブラジル系ヴァーレ・インドネシアや国営アネカ・タンバン(アンタム)が採掘し、日本向けに未精錬のまま輸出してきた。政府がインドネシア国内での加工を義務づける政策へ転換したことで、精錬所への投資が注目され、投資家は南スラウェシ州内で立地先を探していた。

バンタエン県が選好されるのは、県レベルでの投資許可がわずか1日で終了し、費用も無料だからである。電力も州都マカッサルに次ぐ37万キロワットを確保し、課題の港湾整備も急ピッチで進める予定である。約2万人の雇用機会が生まれることになる。

積極的な投資誘致は、ヌルディン県知事の功績である。九州大学で博士号を取得、日本語の堪能な実業家出身の彼は、日本との広い人的ネットワークを駆使し、日系の水産品・野菜加工工場を誘致し、すでに日本向けに輸出している。高品質の水と標高差を生かした農業で、低地では米作、高地では野菜、イチゴ、アラビカコーヒーなどの栽培を進めている。日本から中古消防車・救急車の受け入れも積極的に行ってきた。

地方でもやり方次第でいろいろできる。投資殺到のバンタエン県は、他の地方政府へのよい刺激となるはずである。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20131017idr019A

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【インドネシア政経ウォッチ】第22回 電気自動車の時代は来るのか(2013年 1月 17日)

インドネシアの自動車販売台数は、2012年に初めて100万台を突破した。日本メーカーの多くが内需だけでなく世界市場への生産拠点にも位置付けて拡張投資を進める中、自動車部品などを生産する下請企業の進出も相次いだ。輸出も昨年1~11月に25万台を超え、前年の19万台を大幅に上回るなど好調。名実ともに世界の自動車生産拠点の一角を占め始めた。

このような状況下で、政府は電気自動車の研究開発にも力を入れている。今月9日にはハッタ調整相(経済担当)を議長とする国家電気自動車開発調整会議を開催。教育文化省と科学技術国務大臣府の調整の下、専門家チームも発足させ、官民でそれぞれ複数の電気自動車のプロトタイプを試作している。今年10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際には、会議で使用する車をすべて電気自動車にする計画も出された。

国営電力会社のPLNによると、ジャワ=バリの電力には30%の余剰があるほか、夜間の未使用電力100キロワットを有効活用できる。家庭電源とは別に10~20分で急速充電できる充電機を1台1,000万ルピア(約9万3,000円)で設置可能としている。

最も推進に熱心なのは、ダハラン国務相(国営企業担当)である。しかし、今月5日に中ジャワ州の高速道路で、自身の運転するフェラーリ製の赤い電気自動車で衝突事故を起こし、ナンバープレートの偽造、無許可での電気自動車の走行など警察は道路交通法違反の疑いで大臣を取り調べる事態となった。大統領候補のダークホースと目されていた同相にとって、致命的な事件となった。

電気自動車に関する話題に事欠かないが、今のところ日本メーカーの関心は低いようだ。政府も技術協力を求めずに自前での開発を試みている。果たして電気自動車の時代はいつ頃来るのか。日本メーカーもインドネシア政府の動きを注視していく必要があるだろう。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20130117idr021A

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【インドネシア政経ウォッチ】第11回 魅力的な投資先、東ジャワ(2012年 10月 11日)

日系製造業の多くは現在、ジャカルタ首都圏で操業しているが、用地取得や労働争議などでマイナス面が出始めている。そこで投資先として注目を浴び始めているのが東ジャワ州である。

同州の人口は3,750万人で、2012年上半期(1~6月)の経済成長率は全国平均の6.5%を大きく上回る7.2%を記録した。限界資本生産比率(ICOR)はジャカルタの4.6に対して東ジャワは3.1と低く、投資が経済成長を促す効率はジャカルタよりも高い。州投資局によると、書類がすべて整えば投資認可の必要日数は最長17日。電気などエネルギー供給も現時点では余っている。

既存の工業団地は急速に埋まりつつあるが、ジャカルタに比べればまだ空きがある。州政府は全県・市に「工業団地を急いで造成せよ」と号令をかけ、モジョクルト、ジョンバン、バニュワンギなどで用地買収が進む。価格も現時点では1平方メートル当たり70万~80万ルピア(約5,700~6,500円)と低水準だ。日系企業が多く入居するパスルアン工業団地から州都スラバヤまでの所要時間は1時間強だが、数年後には高速道路でスラバヤ港や空港と直結する。ジョンバンでは韓国企業専用の大規模な工業団地の開発が計画されている。

州知事は、全国に先駆けてアウトソーシング(外部委託)あっせん会社の新たな事業許可を凍結、争議の際には労働組合の代表と直接話し合う姿勢を貫く。実際に10月3日に行われたゼネストでは、多くの工業団地で午前中に終了したもようで、破壊活動もなかった。ジャカルタ周辺では、マネージャークラス以外に一般労働者クラスの採用も難しくなり始めたが、東ジャワではまだ余裕がある。

大阪府と姉妹関係にあるため、日本からの企業視察団が頻繁に来訪する。スラバヤはスラウェシ以東、インドネシア東部地域との交易の中心であり、スラバヤ港は日本と直結する。対日感情も良好である。ジャカルタ以外の投資先として、東ジャワを検討する価値はありそうだ。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20121011idr022A

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ソロの工場に掲げられた標語集

先週の中ジャワ州ソロ(スラカルタ)への出張では、2件の工場訪問も行なった。いずれも繊維関係の有名工場で、そのうちの1社は、従業員数4万人を抱えるインドネシア最大の繊維・縫製企業である。

4万人の従業員を抱える企業では、上のような写真の縫製工場が11棟ある。これ以外に、今回は見学できなかったが、生地を製造する大きな紡績工場が数棟あり、この企業だけで日本全体の2倍以上、韓国全体とほぼ同じ紡績生産を行っているというから、その規模は桁違いである。
中ジャワ州は、ソロを始めとして、ジャカルタ周辺や中国からの繊維関係企業の移転あるいはOEM生産委託先として、注目を集めている。それは、単に最低賃金が低いからだけでなく、このような繊維・縫製関連の実績や基盤がかなり整っていることも背景にある。

今回訪問した2つの工場では、工場内に掲げられた標語がなかなか興味深かった。そのいくつかを以下に紹介する。

「おしゃべりは少なく、働きは多く」。韻を踏んでいるのは、インドネシアの詩ではよくあること。とにかく、インドネシアの人々はおしゃべりが好き。それが職場の雰囲気を和らげているのだが、「おしゃべり禁止!」としないところが興味深い。

「頭のいい人は常に方法を探す。怠け者は常に理由を探す」。問題に直面したときに、どう対応するか、という話なのだろう。まずは自分を守るために「自分は悪くない」と主張し、言い訳を並べる、というのは、何もインドネシア人に限ったことではない。

「怒り。1度怒ると、喜びがなくなる。2度怒ると、理性が飛んで行く。3度怒ると、血圧が上がる。4回怒ると、友だちが去っていく。5回怒ると、すぐに老ける。6回怒ると、罪の扉が開かれる」。最後の6回目のは、怒ること自体が罪となり、地獄への門が開かれる、という意味なのだろうか。

「心。喜びの心は、力強い薬である。頑なな心は、行き止まりにぶつかる。柔らかな心は、親友を招く。貪欲な心は、罠をつくる。きれいな心は、問題を遠ざける」。前の「怒り」と対峙して掲げられていた。もう一つあるのだが、荷物が置かれていて、読み取れなかった。

これらの標語は、社長訓なのだろうか。私には、おそらく、従業員が自分たちで考えて作ったものではないかと思えた。

日本の工場などでは、規律を守らせたり、安全を換気したりする、体言止めの硬い標語が多い印象だったからか、ソロの2工場で見た標語は、思わず「そうだよな」と頷いてしまう、柔らかさを感じた。

標語という些細なものではあるが、職場にストレスを与え続けず、かつ、個々人のモチベーションを高められるような環境づくりという意味では、日本にとっても参考になるかもしれない。

ウォノギリ県の熱血県知事

4月3日、ある企業の方と一緒に中ジャワ州ウォノギリ県へ行った。

ウォノギリ県はソロ(スラカルタ)市から南東へ車で約1時間半、山がちの地形で、出稼ぎの多い貧しい地域として有名だった。若い女性は、ジャカルタなどで家事手伝いやベビーシッターとして働き、男は工事現場などで単純労働力を提供した。経済が発展する現在、ジャカルタ周辺の工場労働者となる者が増えたという。

実際、ジャカルタ=ウォノギリ間には直行バスが何本もある。地元では雇用機会が少なく、夜行バスでジャカルタへ出て働き口を探す。ウォノギリ出身者は、人口圧の高く、雇用機会の乏しいジャワの農村からジャカルタなどの都会を押し出されていく典型的な労働力とみなされていた。

それでも昨今、渋滞や洪水、賃金上昇など、ジャカルタ周辺の投資環境が悪化するなかで、低い最低賃金を求めて中ジャワ州へ企業移転を図るケースが増えてきた。それでも、昔のイメージが強かったからか、ウォノギリ県は取り残されているのではないかと思っていた。

実際は違っていた。貧しくて可哀想なウォノギリ県の姿は影を潜め、企業移転を積極的に受けようとする姿が印象的だった。

企業の方は、ウォノギリ県知事のダナル・ラフマント氏とアポを取ったということだったが、実際に行ってみると、アポは全く取られていなかった。急遽、10分でもいいから会えるようにと、企業の方の知り合いの方が動いて、県知事と会えることになった。

指定場所へ行くと、先客がいた。韓国系企業の方々だった。西ジャワ州かスバンからウォノギリへ工場を移転するという。彼らはすでに3回、ウォノギリ県を訪れており、今回で用地取得の青写真がほぼ決まったようであった。

彼らとの会合を終えた県知事が我々に会ってくれることになった。10分と思っていたが、30分大丈夫とのこと。「韓国系企業は5社程度が頻繁に訪れている」とのことだった。

県知事によると、人口120万人のウォノギリ県のうち、20%が出稼ぎで出ているが、彼らは、「もしウォノギリ県に工場のような雇用機会があればウォノギリで働きたい」という。5月に女性下着を製造する工場、7月に合板工場が操業を開始し、合わせて4000人以上の雇用機会が生まれる予定である。

県内には石灰石が豊富で、セメント工場ができる予定であり、インド洋側にできるそのセメント会社のジェッター付きの港を他企業も利用できるようにする。

ウォノギリ県政府は投資誘致のためにどれぐらい協力的なのか。筆者自身のスラウェシなどでの経験からすると、発展から取り残された投資の来ない地域では、企業投資は役人や地元有力者にとっての格好のたかりの対象になる。ウォノギリ県もそんな要素があるのではないか。色眼鏡で見てしまっている自分がいた。

しかし、次のような県知事の答えにびっくりした。

投資を予定している企業とは、県知事が投資局はじめ関係する県政府機関のトップを一同に集め、投資に必要な許認可や手続についてプレゼンをさせ、それらが何日で終わらせられるかをその場で明言させる。それ以後は、県知事が先頭に立って、許認可や手続などで不都合が出てくればそれを責任をもって解決していく。

ここまでは、威勢のいい県知事ならどこでも言いそうな話だ。でも、一番問題になるのは、用地の取得である。通常は、地権者と企業との間で交渉しなければならない。ところが・・・。

ウォノギリ県では、県知事が前面に立って地権者である住民を説得するというのである。県知事が挙げた事例によると、16ヘクタールの土地を用地として取得したいが、36人の地権者がいる。そう聞いただけでちょっと絶望的な気持ちになるが、県知事が地権者を説得し、わずか2週間ですべての地権者を同意させたのだという。

これは、通常ではあり得ない話ではないか。インドネシアではどこでも、用地買収が困難でインフラ整備が進まない。地権者は地価の値上がりを期待して、なかなか土地を手放そうとしない。

県知事は、工場が来ることで従業員の下宿屋ができ、食事をするワルンが栄え、地域経済への様々な乗数効果が上がることを具体的な数字で示したという。別の事例では、最初は1平方メートル当たり30万ルピアと地権者が言ってきた地価が、このような県知事の説明で地権者が納得し、なんと同11万ルピアへ下がったというのである。

県知事は、我々を前に、30分どころか、1時間以上も熱弁を振るった。そこには、貧しい出稼ぎの地と言われたウォノギリのイメージを変えてやるという、「熱血」県知事の強い意思が現れていた。

県知事は、自ら村々を回って、「工場で働かないか?」とリクルート活動までやった。

そしてまた、ジャカルタなどへ働きに出ている出稼ぎ者に帰ってきてもらうことで、ジャカルタの都市問題の解決にも役立ちたいとも言うのである。彼はジャカルタ首都特別州のジョコ・ウィドド(ジョコウィ)州知事とも親しいが、彼が大統領になったら、各地方に産業を起こすことを提案したいと言った。

実は、県知事と会った後、別の筋から、ウォノギリ県では800ヘクタールの工業団地建設構想があることを知った。すでに民間が用地を確保しているらしい。

筆者は、ウォノギリ県知事だけが突出しているわけではないことを知っている。中ジャワ州南部は、11月末に訪れたプルバリンガ県なども含めて、ジャカルタ周辺からの繊維関連企業などの工場移転ブームに呼応しようとしている。いい意味での自治体間での投資誘致競争が起きているといってもよい。

ウォノギリ県の2014年最低賃金は月額95万4000ルピア、まだ1万円にも満たない。ウォノギリ県への企業移転に絡む話で日本人が県知事に会いに来たのは今回が初めてとのことである。

インドネシア、とくにジャワ島の地方は動いている。首都ジャカルタは、このダイナミズムを知らない。いや、もしかしたら、「知ろうとしない」のではないか。それは言い過ぎかもしれないが。

外資参入は緩和される方向へ(2013.11.10改訂)

11月7日付コンパス紙によると、インドネシア政府は12月末までに投資ネガティブリストの改訂を終える予定。従来の予定より数カ月遅れとなっており、外資参入条件の緩和を目指す経済調整大臣府と各省庁との間で、調整に手間取っている様子がうかがえる。

ネガティブリスト改訂に当たっての原則は以下4点とのことである。すなわち、

(1) 目的は投資促進。
(2) 改訂前より制限的なものにしない。
(3) 1つの分野は1省庁による規定とする(複数省庁にまたがるのを避ける)。
(4) 零細中小企業分野、農業分野は国内向け保護対象として確保。

まだ議論の最中でファイナルではないが、現段階で、以下のような外資規制緩和を計画していることが明らかにされている。

(1) 空港管理運営、港湾管理運営、空港サービス管理運営は100%外資可能(資産ではなく、管理運営のみ)。
(2) 陸運旅客・貨物ターミナル管理・運営は49%まで外資可能(以前は外資参入不可)。
(3) 自然を生かした観光事業の外資比率は49%までから70%までへ。
(4) 被覆付通信業の外資比率は49%までから65%までへ。
(5) 製薬業の外資比率は75%までから85%までへ。

<投資調整庁長官発言>(2013.11.09 追加)
・水産業の外資比率は30%まで
・広告業の外資比率は51%まで(ASEAN企業優先)
・ベンチャーキャピタルなど金融業への外資参入規制緩和
・自動車状態点検業への外資参入規制緩和
・映画配給業、病院業への外資参入規制緩和
(出所)Bisnis Indonesiaより

(2013.11.10 追加)
・映画配給業は外資比率は49%まで。

これらの外資緩和の背景として、政府は、単にインドネシア国内市場だけを目的に来る投資ではなく、インドネシアを生産拠点として、海外へ輸出するための投資を歓迎するとの意向を示している。

一方、同じ記事の中で、銀行業や農園業における外資の支配が高まっているとの警告も発している。今回の外資規制緩和が明確な産業発展戦略に基づいて議論されているものなのかどうか、という疑問も呈している。

筆者としては、上記の議論の方向が国際収支改善・マクロ経済安定との接点を意識したものであり、必ずしも場当たり的なものではないとの印象を受ける。とくに、外資に対して、経済ナショナリズムの風潮が高まる印象を与えないように気を使っている点が注目される。

とはいえ、来年の総選挙・大統領選挙を控えて、人気取りのために、経済ナショナリズム意識の高揚を図ろうとする動きは出てくることになろう。インドネシアは、ここにきて急速に自信を持ち始めている。もう自分たちでできる、という過信さえ首をもたげ始めている。

ただし、以前と違うのは、それをイデオロギー的に進めようとしても、自分の本当の実力を省みる冷静さも持ち合わせていることである。外国支配、という意識の裏に、被植民地意識の根強さを感じる。外資もまた、「インドネシアを支配するのではない」というアピールをもっとするために、現場で現実にインドネシア人・社会との接点をもっともっと持ち、インドネシアでインドネシアのためになる、という姿勢を見せていく必要があると考える。

 

スラバヤの新交通システム計画

ジャカルタでは地下鉄(MRT)建設がいよいよ始まりそうだが、スラバヤでも新交通システムの導入、すなわちモノレールと路面電車の導入へ向けて動き始めた。

スラバヤに来て感じたことの一つは、320万人もの人口を抱えた大都市にもかかわらず、バスや乗合などの公共交通機関が極めて脆弱なことである。もちろん、乗合は何路線もあり、ジョヨボヨ・ターミナルというものもある。しかし、ジャカルタのビスコタ、メトロミニ、コパジャ、ミクロレットのような頻繁に走っている公共交通がほとんどない。バイクと自家用車が圧倒的である。

でも、スラバヤはもともと公共交通機関のあった街なのである。オランダ時代の1925年頃から1975年頃まで、蒸気で走る路面電車と電気で走る路面電車が走っていた。 料金は当時の額で3セン、オート三輪が25セン、タクシーが50センだったという。路面電車はバスに取って代わられた。しかし、そのバスも廃れて、本数が少なくなった。

スラバヤ市の道路延長距離は1426キロメートルで、個人所有二輪車・自動車の台数は2008年の140万9360台から2011年には699万3413台へ急増した。ところが、その一方で、バスの台数は250台から167台へ、乗合の数も5233台から4139台へと大幅に減少している。

当然、道路の渋滞は激しくなってくる。5年以内に、スラバヤの渋滞はジャカルタ並みになるという見方が強い。

そこで、スラバヤ市は、モノレールと路面電車を組み合わせたMRTを導入し、2015年に運転を開始したい意向である。両者の概要は以下の通りである。

<モノレール>(SUROTREM)
延長距離:16.7km
操車場駅:Joyoboyo
停車駅数:29
駅間距離:500-1,000m
年間予想利用客:2793万6900人
投資額:1.2兆ルピア
1車両当たりの最大乗客数:200人
車両編成:2両連結
経済的な料金:8,000-10,000ルピア
住民の支払可能額:6,000-10,000ルピア
車両数:21台

<路面電車>(BOYORAIL)
延長距離:23km
操車場駅:Kenjeren, Joyoboyo
停車駅数:23
駅間距離:500-2,000m
年間予想利用客:4371万7742人
投資額:8.5兆ルピア
1車両当たりの最大乗客数:400人
車両編成:4両連結
経済的な料金:37,000-40,000ルピア
住民の支払可能額:6,000-10,000ルピア
車両数:18台

予想されるのは、建設工事により渋滞がよりひどくなる、ということである。また、公共交通期間に乗り慣れていない人々が、果たして整然と乗り降りできるだろうか、という点も懸念材料である。

そもそも、民間が資金を出さなければ実現しない話だが、本当に資金を出す民間が出てくるのだろうか。実現できたらいいけれど、そう簡単ではないだろう。スラバヤと同時期にモノレール導入を予定していたマカッサル市は最近、計画の延期を発表している。

スラバヤのモノレールと路面電車については、友人のブログに詳しい情報が載っているので、そちらも参照して欲しい。

スラバヤのトラム(市内電車)のお話 その1
スラバヤのトラム(市内電車)のお話 その2
スラバヤのトラム(市内電車)のお話 その3
スラバヤのトラム(市内電車)のお話 その4
スラバヤのトラム(市内電車)のお話 その5
スラバヤにもモノレールだって!!

(参考)TEMPO, 2 Juni 2013.

2013年第1四半期の投資は依然好調

4月22日にインドネシア投資調整庁(BKPM)から発表された2013年第1四半期(1〜3月)の投資実施額は、前年同期比30.6%増の93兆ルピア(約95億ドル、約1兆円弱)となった。投資実施総額の70%を外国投資が占めた(65.5兆ルピア)が、伸び率では国内投資が前年同期比39.6%増となり、外国投資(同27.2%増)を上回った。

カティブ・バスリBKPM長官によると、国内投資の急伸は旺盛な外国投資の影響を受けている。すなわち、外国投資が増えるとともに、その外国投資へモノを供給する、あるいは外国投資による製品に関係する国内投資が増える構造になる。カティブ長官は、自動車産業への部品サプライヤーの例を挙げて、外国投資の増加が国内投資へスピルオーバー効果をもたらしていると解釈する。

国内投資の大きかった業種は、鉱業(6兆ルピア)、倉庫・通信業(6兆ルピア)、金属・機械・電機(1.8兆ルピア)、電気・ガス・水道(1.7兆ルピア)であった。

国内投資の大きかった地域は、東ジャワ(9兆ルピア)、東カリマンタン(4.8兆ルピア)、南カリマンタン(3.4兆ルピア)、北スマトラ(2兆ルピア)、ジャカルタ(1.9兆ルピア)の順である。

一方、外国投資の大きかった業種は、鉱業(14億ドル)、化学・薬品(12億ドル)、金属・機械・電機(10億ドル)、輸送機器(9億ドル)、製紙・印刷(6億ドル)であった。

外国投資の大きかった地域は、西ジャワ(13億ドル)、バンテン(11億ドル)、パプア(8億ドル)、東ジャワ(6億ドル)、リアウ(6億ドル)の順である。

外国投資の大きかった国は、シンガポールを抜いて日本(12億ドル)がトップになった。
日本に続くのがアメリカ(9億ドル)、韓国(8億ドル)、シンガポール(6億ドル)の順である。

やはり、日本からの投資、とくに自動車関連の投資がここに来て、投資全体のなかで相当に大きな地位を占めていることが改めて分かる。なお、日本からの自動車関連投資については、別稿として考察してみたいことがある。

BKPMによる2013年通年の投資実施額の目標は390.3兆ルピア。その意味では、幸先のよいスタートを切ったといえるかもしれない。しかし、これが第2四半期にも続くかどうかは、決して楽観はできない。

たとえば、2013年2月の投資財の輸入は前月比 1.59%減となった。カティブ長官は、投資財輸入減少が今後も続くようならば、投資実施にも影響が出てくると懸念する。

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