【インドネシア政経ウォッチ】第140回 ジョコ・ウィドド大統領の1年(2015年10月22日)
10月20日でジョコ・ウィドド(ジョコウィ)政権は発足1年を迎えた。1年前の期待にあふれた熱気に比べると、今の国民の政権を見る目は厳しさを増している。大統領個人の目からは、この1年がどう見えた のだろうか。
ジョコウィ氏は、大統領選挙の対抗馬だったプラボウォ氏のような大統領職への政治的野心を持っていたわけではない。プラボウォ氏に勝てる候補として白羽の矢が立ち、大統領になってしまったのである。
ジョコウィ氏自身、ソロ市長もジャカルタ首都特別州知事も大統領も「仕事」と捉えてきた。現場へ自ら出かけて問題の本質を把握しようとする地方首長時代からの活動スタイルは、大統領になってからも変わっていない。大統領府に全国各地とテレビ電話可能な設備を整え、大統領選挙で活躍したサポーターが大統領府へ直接情報提供する仕組みも作った。もっとも、それらが今も機能しているかどうかは定かでない。
しかし、ジョコウィ氏が相手にする利害関係の数と規模は、地方首長時代とは比較にならないほど大きく複雑になった。国会、政党、省庁、実業界などが自らの利益拡大と既得権益保持のために大統領に寄りつき、また、全国各地の現場の問題が一気に押し寄せてきた。政党や実業界のトップでなく、有力支持母体もバックに持たないジョコウィ氏は、それらをうまく調整できず、途方にくれることも多かったであろうことは想像に難くない。
ジョコウィ氏は本来、メディアで言われるような人気取り政治家ではなかった。現場へ出向いて問題解決を図っても、それを誇示することはなかった。しかし、大統領となり、地方首長時代のように自分の思う通りに政策を実行できない現状では、国民の人気度も低下するなかで、存在感をアピールするために人気取りをせざるを得なくなる可能性がある。
これまでのジョコウィ氏のパフォーマンスは、副首長に支えられてこそ発揮できた面がある。その点で、カラ副大統領との関係も今後の注目点となる。
(2015年10月20日執筆)