インドネシア元技能実習生からの問い合わせが増えた
先日、仙台入管より登録支援機関登録拒否通知書が届きました。
登録支援機関とは、2019年4月の出入国管理及び難民管理法の改正によって新設された在留資格「特定技能」に関して、特定技能労働者を雇用する日本企業のサポートをする機関です。
たとえば、現地事情に疎い日本企業に代わって現地で候補者を見つけ、候補者に対する面接やオリエンテーションなどの事前準備を行ったり、雇用後の日本での生活支援を行うことが業務とされています。
弊社(松井グローカル合同会社)は、2019年4月に仙台入管へ申請し、申請料金の支払も行いました。その後、4月下旬、インドネシア出張時に、「実績が乏しいので登録は難しい」との連絡がありました。
私自身は5年前から、インドネシア人元研修生の組織であるインドネシア研修生実業家協会(IKAPEKSI)のアドバイザーを務めており、折に触れて、インドネシア人技能実習生の相談にあたってきました。
また、「特定技能」が新設された後は、特定技能にまつわる詐欺行為が横行するインドネシアへ出向いて、各所で「特定技能」についての正しい情報の供与に努めてきました。弊社のフェイスブックページは、5万件以上の訪問者があり、100件以上の問い合わせに応じてきました。
ただ、それらはすべてボランティア・ベースで行ったものでした。
仙台入管によれば、実績というのは、請求書ベースの金銭のやり取りを伴ったものを指すので、弊社の場合、いくらボランティアベースで行っても、実績とは見なされない、ということのようでした。
出入国管理及び難民認定法第19条の26第1項第14号該当、すなわち「支援業務を的確に遂行するための必要な体制が整備されていない者」に該当するということでした。
実績という点から見れば、特定技能に関わる登録支援機関の多くが、これまで技能実習を担ってきた監理団体によって占められていることも納得できます。志を持って、外国人の方々を支援しようと思っても、過去の実績がなければ、登録を拒否されるのでした。逆に、技能実習の監理団体ならば、その中身に問題が見られなければ、実績として認められるのでしょう。
4月に「難しい」という話を聞いた後、登録支援機関になることのプラスとマイナスを色々と考えてきました。そして、むしろ、登録支援機関に登録されなくてよかったのではないか、と思うことにしました。
持論ですが、技能実習と特定技能ははっきりとわけるべきだと考えます。技能実習は本当の意味での技能人材育成とし、特定技能は労働者向けの機会とし、日本へ出稼ぎに来る外国人は特定技能のみにすべきである、と考えます。
事実上労働者として受け入れているのに、技能実習だから3年間職場を離れられない、というのは間違っています。3年間同じ場所にいるのは、技能を習得する人材育成のためです。
労働者として雇うならば、日本人の場合と同じように、職場を移る権利を持つのは当然でしょう。外国人だから転職できないというのは、人権問題です。
そもそもの始まりから、嘘とごまかしが横行する技能実習でうまく摘発を逃れてきた監理団体からすれば、特定技能も同じようにうまくやれると思っていることでしょう。
4月に仙台入管へ登録支援機関の登録申請に出向いた際、担当職員の方と技能実習の現況について意見交換したのですが、担当職員の方は手続をきちんとやることに集中していらして、今後の外国人受入れの在り方等について、何らかの意見を示すことはありませんでした。意見表明を避けたというよりも、組織の示す方向性に従う、というニュアンスだったと記憶しています。
日本政府から見て、インドネシアと30年以上深くかかわってきた自分よりもふさわしいと考える登録支援機関が、非の打ちどころのないインドネシア人特定技能労働者のサポートをすることを切に願っています。
日本とインドネシアとの特定技能に関する協力覚書は2019年6月26日に調印されました。すでに、この協力覚書は、以下のサイトから、英語、インドネシア語、日本語でオリジナル・テキストを読むことが可能です。
英語: https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000492333.pdf
インドネシア語: https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000492335.pdf
日本語: https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000492327.pdf
協力覚書によると、特定技能者を活用したい日本の受入機関・企業は、インドネシアのオンライン・コンピュータ労働市場情報システムであるIPKOL (Informasi Pasar Buruh Terkomputarisasi dalam Jaringan di Indonesia) に求人情報を登録することが求められます。そして、このIPKOLを通じて、特定技能での就労を希望するインドネシア人候補者のデータベースを受け取ることができます。
日本で特定技能による就労を希望するインドネシア人候補者は、IPKOLにデータを入れる必要があります。このため、従来の技能実習のような、送り出し機関や監理団体を通じる必要はありません。候補者のデータ入力方法についての説明が、インドネシア政府からあるはずです。
必ずしも登録支援機関を介さなくても、IPKOLを通じて、人材を獲得することは可能だとは思います。
まずは, 協力覚書のオリジナル・テキストを注意深くお読みください。
特定技能については、様々な留意点がありますが、それについては、また別途、論じたいと思います。
2月12~15日の4日間、福島市で外国人技能実習制度関係者養成講習を受講しました。
今回の講習は4種類。敢えてすべてを受講しました。すなわち、監理団体向けの技能実習監理責任者等講習、技能実習生の受入企業向けの技能実習責任者講習・技能実習指導者講習・生活指導者講習の4種類です。
これらは法令講習で、2020年4月から、技能実習に関わる監理団体の監理責任者・外部役員・外部監査役と、受入企業の技能実習責任者は、講習受講が義務化されるということです。また、技能実習指導者と生活指導者は各事業所(工場など)ごとに配置されますが、この講習を受けていると、優良技能実習実施者として、加点評価になります。
これらの講習は3年間有効で、3年毎に更新する必要があります。
敢えて4種類の講習をすべて受けたことで、技能実習の関係者に対して講習でどのような内容が教えられているか、実際に監理責任者、技能実習責任者、技能実習指導者、生活指導者となる方々はどのような方々なのか、技能実習の現場では何が問題となっているのか、などを知ることができました。
講習を通じて分かったのは、2017年11月に施行された技能実習法は、もしそれをきちんと遵守するとなると、本当は、実に厳しい法律であるということです。
監理団体や技能実習実施者(受入企業)が守るべき内容は、ほぼすべてが法律の条文によって定められています。たとえば、監理団体が定期監査などで受入企業において賃金未払いや残業代の計算間違いなどの不正を発見した場合、法律の条文によると、監理団体はその是正を指導するとともに、労働基準監督署へ通報しなければならないと定められています。
すなわち、監理団体は不正に対して指導するだけでなく、その不正の存在を通報しなければ、法律違反になる、ということです。その内容にも依りますが、法律違反となると、監理団体の認可取り消しになりえます。
技能実習計画と違う実習を行ったことを表沙汰にしたくない場合、どう処理するでしょうか。
まず、監理団体が計画と異なる実習を行っていることを知りながらそれを通報しないと罰せられます。次に、技能実習日誌に実際に行った実習の内容を記載すると、計画とは違うことが明らかになり、罰せられます。あるいは、日誌の内容を計画通りに行ったと記載した場合、嘘の記載をしたことになり、罰せられます。
つまり、どう転んでも、バレたら必ず罰せられる、というわけです。
実際にはどうでしょうか。監理団体と受入企業とが共謀して、不正がバレないように隠蔽することが多いのではないかと想像します。監理団体は、実習生1人当りいくらという形で受入企業から監理費を支払われています。いってみれば、顧客である受入企業に対して、監理団体が厳しく処することは相当に難しいはずです。
政府は、今回の技能実習法を通じて、悪徳監理団体や不良受入企業を技能実習から排除することを目的としていたとも考えられます。基本的に、監理団体や受入企業を信用していないからこそ、このような厳しい法律によって監督しようとしたのだと思われます。
こうして、私自身は今回、技能実習制度について講義できるぐらいになりたいと思って受講しました。そのレベルに達したかどうかは不明ですが、技能実習法を遵守するだけでも、ネガティブ・イメージが蔓延する技能実習は相当に適正化するのではないか、と感じました。
政府は、今年4月から新しい在留資格「特定技能」を創設し、技能実習とは別の労働力としての外国人材を受け入れられるよう、入管法を改正しました。
その中身についてはまだまだ不明点が多いのですが、技能実習を3年終えた実習生の相当部分が「特定技能」1号へ移行することが予想されます。「特定技能」には監理団体は関われませんが、外国人材のリクルート・サポートを行う登録支援機関ができます(新設の出入国在留管理庁の認可が必要)。この登録支援機関が正しく機能できるかどうかが重要になってくると思われます。
以前、下記のブログにも書きましたが、技能実習を本来の意味での技能実習へ正していく必要があると考えています。
インドネシア人技能実習生の活用に関するコンサルティングを行います
インドネシアの地域産業人材需要を知り、どのような人材が必要かを考え、それにマッチングできる日本の地域産業の状況を意識したうえで、インドネシアの地方政府の認知の下に技能実習生を日本で受け入れる。実習を終了しインドネシアへ帰国した後、彼らがどのように地域で貢献していくかをずっとフォローする。私自身は、これらを一貫して行なうことが可能です。
併せて、実習生を受け入れた日本の地域産業・企業が今後どのように地域経済振興・地域再生に関わっていけるのか、そうした外国人材を地域づくりのための戦力として生かしていけるかどうか、といったことにも関わることが可能です。
インドネシア人の技能実習を行っている監理団体や受入企業などで上記のような助言を行うアドバイザーの必要な団体、外部役員や外部監査役が必要な監理団体などございましたら、matsui@matsui-glocal.com へご連絡ください。
また、新設の「特定技能」に関わるインドネシア人向けの登録支援機関の設立・運営についても、お手伝いできればと思います。インドネシアの現場と日本の現場を知り、技能実習関連講習を受講済、現地語(インドネシア語)で現地地方政府・企業等との適切なやり取りが可能です。インドネシアは全国どの地方ともコンタクト可能です。
関心のある方は、matsui@matsui-glocal.com へご連絡ください。
東京の我が家の庭に、遅咲きの梅の花が一輪咲きました。
このタイトルにちょっと違和感を感じる方がいるかもしれません。なぜそう考えるのか。少し書いてみたいと思います。
2018年6月、ひょんなことから、北陸経済連合会の関連団体である北陸AJECが主宰する共同調査「北陸企業の外国人材の採用・活用-現状と課題-」のメンバーに加えていただき、報告書の1章を執筆することになりました。
この調査自体は、もともと北陸の大学などへの留学生を中心とした高度人材を地域がどのように活用するか、という観点から行われていたものです。ただ、北陸企業の現場では、やはり技能実習制度に係る問題が高い関心を示していることから、それについて私が担当することになったのです。この関連で、2019年3月26日に金沢市で講演することになりました。
2019年4月からは改正入管法による新たな在留資格「特定技能」が創設され、技能実習から特定技能へ、研修から労働力へ、大きな転換が進んでいくという見方がメディアなどに散見されます。現在、様々な角度から、この動きについてウォッチし、今後どのように改革を進め、方向性を打ち出していくのが望ましいか、自分なりに色々と思案中です。
それは、今まさに直面している人手不足問題にどう対応していくかという問題を超えて、これから20年、30年後の日本社会がどのようになっていくのか、どうなっていくのが人々にとって望ましいのか、幸せになるのか、ということまで構想(妄想?)したうえで、今の動きを捉えていかなければならない、と個人的に思っているからです。
たとえば、地域を再生・活性化させるには、「よそ者、若者、ばか者が必要だ」といった議論がありますが、どんな「よそ者、若者、ばか者」が必要で、彼らがどのように必要なのか、どのように振る舞うのか、といったことをより深く広く考える必要があります。
そこで、ふと思うのです。「よそ者、若者、ばか者」って、性別とか出自とかで制限されるのか、と。そして、日本人に限られるのだろうか、と。
「よそ者、若者、ばか者」が地域社会やそこの人々と関わるときには、適切な関わり方というものがあります。そこに移住するだけが関わり方ではないのです。時々住んでみたり、複数拠点の一つにしたり。遠くに住みながらもずっとその地域を気にしながら応援し続ける、というのもありだと思います。
そこで、次のような考えが頭に浮かびました。
人口流出や高齢化、過疎によって人口わずか1000人の地域。もしもその地域が好きで、気になって、応援したいと思う応援団が(たとえば)10万人存在すると分かったら、その地域は、そこに住んでいる1000人のためだけの場所ではなくなるはずではないでしょうか。
きっと、そこに住んでいる人には、なぜ、よその人が10万人も自分の地域を好いてくれているのか、分からないかもしれません。そこで言えることは、よその人には、そこに住んでいる人には感じられない何らかの価値や魅力を感じている、ということです。もしかすると、それは地元の人々にはあまりにも当たり前すぎて、何も感じないのかもしれません。
その地域が好きだというファンを、別に日本国内だけに限定する必要はありません。世界中にその地域のファンが何万人もいる、ということを意識した地域づくりや地域振興は、今までのそれとは確実に違ったものになるはずです。
この着想は、実は、高知県馬路村がどうやって存続し続けてきたか、ということから得たものです。馬路村農協の様々なユズ加工品を通じて、村の人口の何倍もの馬路村ファンが全国にいるのです。
海外の方々にもそうしたファンになってもらうことは可能ですよね。
村から若者が流出してしまい、若い世代といえば、外国からやってきた技能実習生ぐらい、というところも少なくないかもしれません。でも、3年もの長期にわたって地域で生活する彼らは、「よそ者、若者、ばか者」になれるのではないでしょうか。
日本国外で応援してくれるその地域の外国人ファン。その地域で生活する技能実習生たち。それらの外国人材を、地域づくりの戦力として活用する方策を考える時代になってきたのではないでしょうか。
地方にとってこそ、外国人材との共生は待った無しの状況です。外国人材を入れるか入れないか、という悠長なことは言っていられない状況だと思います。そうだとするならば、共生を超えて、地域の外国人材を「よそ者、若者、ばか者」としてどのように地域のために活用するか、を考え始め、準備する時期にもう来ているのだと思います。
「よそ者、若者、ばか者」って、性別とか出自とかで制限されるのか、と。そして、日本人に限られるのだろうか、と前述しました。外国人材だけでなく、様々な人材を地域づくりの戦力にしていくのだと思います。
そのために努力することは、必ずしも、英語を勉強することではありません。
それは、地域の魅力を高めることです。
地元の人が魅力だと思っていることと、よそ者が魅力と感じるものは同じとは限りません。それを意識しながら、地域の魅力を高める。それは新しく作った魅力でもいいのです。
そのためには、どうしたらいいのか。
このブログで、今後、折に触れて、私なりの考え方を示してみたいと思います。
なお、私自身は、日本だけでなく、インドネシアでもアフリカでも、世界中どこでも、地域づくりに関しては、まったく同じく、提示してきた(提示していく)考えです。