インドネシア元技能実習生からの問い合わせが増えた
新聞などのメディア紙上で、特定技能外国人が増えないことが取り上げられている。
その原因として、制度が突貫で作られたからとか、送り出し国側の準備が整っていないとか、書類などの手続きが煩雑だから、などなどいろいろな理由が挙げられている。
一つの大きな原因は、特定技能が技能実習の延長線上で考えられていることにある。技能実習で技能を身につけてから、特定技能へ移る、というイメージである。
ところが、特定技能は単純労働も含む、とも言っている。技能実習で技能を身につけた人に単純労働をさせる、ということがありうるのか。それはおかしい。
特定技能が増えないのは、試験などの準備が遅れていることもあるが、日本の企業側が、同じ企業内で技能実習2号(3年間終了)の者が特定技能1号へ移る場合を除き、新たに特定技能を望まないからだと思われる。
特定技能外国人は、業種が同じならば転職が可能、賃金や福利厚生などで日本人と同等以上にしなければならない。
なぜ、企業は特定技能よりも技能実習を選好するのか、といえば、その理由は一つ、技能実習ならば、受け入れた企業から3年間はよそへ動かないからだ。3年間の労働力を確保できるからだ。
でも、なぜ技能実習は3年間よそへ動けないのか。それは「労働」ではなく「技能実習」だからである。
2017年に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)の第3条2項では、技能実習制度を労働力の需給の調整の手段とすることを明確に禁じている。すなわち、人手不足の解消手段として、技能実習制度を活用することは、明確な法律違反となる。
3年間よそへ動けないことを理由に技能実習を選好する企業は、上記の技能実習法に明確に違反している。おそらく、技能実習生を受け入れている大半の企業は、法律違反を犯している。
でも、取り締まれないのだ。本気で取り締まったら、「労働力」を確保できなくなり、企業活動は止まり、日本経済全体が動かなくなってしまうかもしれない。
行政側は、人員不足を理由に、違法行為をすべて取り締まれない、として、取り締まれないのである。
本来、「技能実習」だから3年間同じ場所であるのに、実際には、3年間動くことのできない「労働力」として使っているのである。これは、技能実習生側からすれば、詐欺になるのではないか。
「彼らだって金稼ぎに来ているのだから、いいではないか」という答えが聞こえてきそうだ。そうした状況であることは否定しない。しかし、「日本へ行ったら稼げるぞ」と言って技能実習生をリクルートしている現実からすれば、最初から、技能実習制度を隠れ蓑にして、技能実習生を「労働力」として受け入れていることになる。やはり、法律違反である。
ではどうするか。
私見では、外国から日本へ「労働者」として稼ぎに来る者は、「労働者」として受け入れるのが正しい。今の制度ならば、特定技能の手続を簡素化して、労働力として雇う企業は、原則として特定技能労働者を雇うのが望ましい。
労働者なのだから、日本人に対するのと同じように、転職の自由を認め、賃金や福利厚生のコストを負担する。
技能実習はどうなるのが良いのか。
本当の意味での「技能実習」にする。彼らは「労働者」ではなく、「見習い」「研修生」である。3年間の技能実習カリキュラムをきちんとつくり、それに合わせて人材育成をする。
3年間の「技能実習」が終わったら、「労働者」として特定技能労働者へ変わってもよいだろう。あるいは、「技能実習」中にステータスをグレードアップさせて、専門学校や大学を卒業し、高度人材となっていってもよいだろう。
何を技能実習で学ぶかを、技能実習生の送り出し側が明確にしたうえで、日本へ送る。日本ではその目的を満たせる受入企業を探して、受け入れてもらう。
技能実習と言いながら、そのイニシアティブは、送り出し側ではなく受け入れ側が持っている、というのが現状である。送り出し側が受け入れ側のニーズに合わせるのはおかしい。技能を教えてもらいたい側、送り出し側のニーズがまずあって、それに対して、受け入れ側が合わせるのが自然である。
特定技能と技能実習は明確に分けるべき、と考える。そして、技能実習を、実習を受けいれる日本側のニーズではなく、実習を受ける実習生側のニーズを出発点とする形に変え、人材を育成する本当の「技能実習」にする必要があると考える。
今のような、あたかも詐欺のような制度、事実上の違法状態が蔓延している技能実習制度を、法律が謳うまともな制度に変える。そして、稼ぐために日本へ来る者たちを労働者として受け入れる。受け入れるからには、労働条件は日本人と同じにする。転職されるのも覚悟する。
もう、今のような、国家総ぐるみでの「まやかし」の状態は止めようではないか。
先日、仙台入管より登録支援機関登録拒否通知書が届きました。
登録支援機関とは、2019年4月の出入国管理及び難民管理法の改正によって新設された在留資格「特定技能」に関して、特定技能労働者を雇用する日本企業のサポートをする機関です。
たとえば、現地事情に疎い日本企業に代わって現地で候補者を見つけ、候補者に対する面接やオリエンテーションなどの事前準備を行ったり、雇用後の日本での生活支援を行うことが業務とされています。
弊社(松井グローカル合同会社)は、2019年4月に仙台入管へ申請し、申請料金の支払も行いました。その後、4月下旬、インドネシア出張時に、「実績が乏しいので登録は難しい」との連絡がありました。
私自身は5年前から、インドネシア人元研修生の組織であるインドネシア研修生実業家協会(IKAPEKSI)のアドバイザーを務めており、折に触れて、インドネシア人技能実習生の相談にあたってきました。
また、「特定技能」が新設された後は、特定技能にまつわる詐欺行為が横行するインドネシアへ出向いて、各所で「特定技能」についての正しい情報の供与に努めてきました。弊社のフェイスブックページは、5万件以上の訪問者があり、100件以上の問い合わせに応じてきました。
ただ、それらはすべてボランティア・ベースで行ったものでした。
仙台入管によれば、実績というのは、請求書ベースの金銭のやり取りを伴ったものを指すので、弊社の場合、いくらボランティアベースで行っても、実績とは見なされない、ということのようでした。
出入国管理及び難民認定法第19条の26第1項第14号該当、すなわち「支援業務を的確に遂行するための必要な体制が整備されていない者」に該当するということでした。
実績という点から見れば、特定技能に関わる登録支援機関の多くが、これまで技能実習を担ってきた監理団体によって占められていることも納得できます。志を持って、外国人の方々を支援しようと思っても、過去の実績がなければ、登録を拒否されるのでした。逆に、技能実習の監理団体ならば、その中身に問題が見られなければ、実績として認められるのでしょう。
4月に「難しい」という話を聞いた後、登録支援機関になることのプラスとマイナスを色々と考えてきました。そして、むしろ、登録支援機関に登録されなくてよかったのではないか、と思うことにしました。
持論ですが、技能実習と特定技能ははっきりとわけるべきだと考えます。技能実習は本当の意味での技能人材育成とし、特定技能は労働者向けの機会とし、日本へ出稼ぎに来る外国人は特定技能のみにすべきである、と考えます。
事実上労働者として受け入れているのに、技能実習だから3年間職場を離れられない、というのは間違っています。3年間同じ場所にいるのは、技能を習得する人材育成のためです。
労働者として雇うならば、日本人の場合と同じように、職場を移る権利を持つのは当然でしょう。外国人だから転職できないというのは、人権問題です。
そもそもの始まりから、嘘とごまかしが横行する技能実習でうまく摘発を逃れてきた監理団体からすれば、特定技能も同じようにうまくやれると思っていることでしょう。
4月に仙台入管へ登録支援機関の登録申請に出向いた際、担当職員の方と技能実習の現況について意見交換したのですが、担当職員の方は手続をきちんとやることに集中していらして、今後の外国人受入れの在り方等について、何らかの意見を示すことはありませんでした。意見表明を避けたというよりも、組織の示す方向性に従う、というニュアンスだったと記憶しています。
日本政府から見て、インドネシアと30年以上深くかかわってきた自分よりもふさわしいと考える登録支援機関が、非の打ちどころのないインドネシア人特定技能労働者のサポートをすることを切に願っています。
日本とインドネシアとの特定技能に関する協力覚書は2019年6月26日に調印されました。すでに、この協力覚書は、以下のサイトから、英語、インドネシア語、日本語でオリジナル・テキストを読むことが可能です。
英語: https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000492333.pdf
インドネシア語: https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000492335.pdf
日本語: https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000492327.pdf
協力覚書によると、特定技能者を活用したい日本の受入機関・企業は、インドネシアのオンライン・コンピュータ労働市場情報システムであるIPKOL (Informasi Pasar Buruh Terkomputarisasi dalam Jaringan di Indonesia) に求人情報を登録することが求められます。そして、このIPKOLを通じて、特定技能での就労を希望するインドネシア人候補者のデータベースを受け取ることができます。
日本で特定技能による就労を希望するインドネシア人候補者は、IPKOLにデータを入れる必要があります。このため、従来の技能実習のような、送り出し機関や監理団体を通じる必要はありません。候補者のデータ入力方法についての説明が、インドネシア政府からあるはずです。
必ずしも登録支援機関を介さなくても、IPKOLを通じて、人材を獲得することは可能だとは思います。
まずは, 協力覚書のオリジナル・テキストを注意深くお読みください。
特定技能については、様々な留意点がありますが、それについては、また別途、論じたいと思います。
●外国人が日本を選ぶ理由が議論されていない
「日本は、外国人労働者によって選ばれる国にならなければならない」という文言をよく聞く。韓国や台湾など、他のアジア諸国との外国人労働者争奪競争を意識したもので、そのためには、外国人労働者への法的保護を強め、これまでより働きやすい環境を整えることが必要、といった論調がみられる。
しかし、重要なことが一つ抜けている。すなわち、外国人労働者は何をもって日本を選ぶのか、その理由についての議論が全く見られないのである。
このこと一つとっても、昨今の外国人労働者をめぐる議論が、日本側、彼らを活用する側からの視点からしか行われていない、極めて一方向的な議論に終始していることが分かる。そう、政府も民間も、誰も外国人労働者側のことなんか本気で考えていないのだ。自分たちの人手不足が解消すれば、誰でもいいというような状況なのである。
なぜ外国人労働者は日本に来たいのか。他国ではなく、日本を選ぶのか。あるいは逆に、何を売りにすれば、彼らは自分たちの就労先として日本を選ぶのか。この辺りを、しっかりと調査した形跡はうかがえない。
外国人労働者への法的保護を強め、これまでより働きやすい環境を整えることは、もちろん重要である。その場合には、どれだけ他国よりも法的保護を強めるのか、働きやすい環境を整えるのか、ちゃんとアピールする必要があるのではないか。
地域おこしの一環で新産品開発・販売促進を試みる際、どこもかしこも同じような饅頭や漬物を作ってしまう、という批判をよく聞く。そのときに、他の類似製品と何が違うのか、同じ種類であればどのように他より優れているのか、説明できなければ、その新産品はアピールできない。お客さんから選ばれる商品にはならない。
もし政府が、選ばれる国になるために外国人労働者への法的保護を強め、これまでより働きやすい環境を整えるというなら、他国よりも優れている点をきちんとアピールすべきなのである。
もっとも、外国人労働者が、そういった点を重視して日本を選ぶかどうかは、やはり確認しなければ分からない。ただ、昨今のメディア報道や私自身のインドネシア人技能実習生・元実習生らとの関わりのなかから、見えてきたことがある。
高い賃金を理由に日本を選ぶ者もたしかにいる。でも、それ以上に、彼らが日本にあこがれる理由があるのだ。
それは、日本の高い技術・技能を学びたい、という理由である。
●日本で技術・技能を学びたい
彼らの頭のなかには、1970~1980年代の高度経済成長を成し遂げた日本のイメージがあり、それを体化させた日本製品の高品質への尊敬がある。彼ら自身、そうした日本製品を手にし、あるいは手にできなくとも、羨望のまなざしで日本製品を見ながら育ってきた。
時代は変わり、我々日本にいる者たちは、彼らのあこがれたそれは過去の日本であり、実際には多くの技術や技能における熟練が失われ、技の継承が難しい時代になっていることを知っている。家電製品を見るまでもなく、韓国や台湾や中国がもはや世界市場で重要な地位を占め、日本もそれら市場プレーヤーの一つに過ぎなくなったことは、国家としては悲しく寂しいことであろうが、急速に変化する時代のなかで、その現実をきちんと受け入れなければならない。
そこで、過去の日本にまだあこがれを抱き、それを学べるのではないかと思って日本を選ぶとするならば、受入側はどうすべきなのか。
もはや後継者はいないと思って継承を諦めていた技術や技能を、もう一度、引っ張り出してきて、彼らに教え込むことはできないだろうか。
発展を急いだ国々では、釘やネジを正確に造ったり、ハサミをきちんと研いだり、道具や工具や産業機械を自前で製造・管理したり、建築の際に安全に作業する手順など、そうした基礎的な部分が疎かなまま、最先端技術やIT/AIへ一気に飛びつこうとしている様子がある。何かあったときに、ベーシックへ戻って自前で問題を解決できる技術や技能が求められているはずである。
もっとも、それは外国人労働者だけでなく、日本人労働者でも同様なのだが・・・。しかし、日本人労働者がそうした現場に来たがらないという現実もある。日本人が見つからないから外国人、という安易だが背に腹は代えられない状況がある。
日本で技術や技能を学びたい、という外国人労働者が来たなら、受入側は彼らにきちんと教えてくれるだろうか。そうあってほしいと思うのだが。
●日本で学んだ技術や技能を活かすために
日本へ行ったら技術や技能が学べる、としても、日本で学んだ技術や技能が、外国人労働者の祖国や地元で生かされなければ意味はない。
そこで、外国人労働者が日本へ来る前に、できれば地元の政府や企業の関係者を交えて、日本でどのような技術や技能を学んでくるのが帰国後に地域への貢献になるのかを話し合い、適任な候補を選抜し、彼に地域からの期待を背負う形で日本の受入企業で学んでもらう、という道筋をつけるべきだと考える。
日本の受入企業側も、そうした使命をもって受け入れた外国人労働者を手荒に扱うことはできないはずだ。なぜなら、受入企業が長年培ってきた技術や技能を尊敬し、それを学ぼうとする稀有な人材は、いまや日本のなかで探し出すことが難しいからである。だったら、受入企業を敬う外国人労働者に対して、それを託し、たとえ日本でなくとも、世界のどこかで匠の技が伝承され、世の中に役立てるような形で伝承されていくことを望むはずだと思うからである。
もしこれが実現できるならば、技能実習制度は本当の意味での技能実習となり、技能実習生を受け入れて育てた企業は、収益や利潤だけではない、技術・技能教育機関として、日本の地域のなかに存続していく価値を持つことになる。地域に企業が残っていくための一つの方策として、本来的な意味での技能実習制度が活用できるのではないか。そうした企業を表彰し、指導者企業という称号を与えて行政が存続を支援する政策を採ることも有用である。
そしてまた、受入企業が当たり前だと思っている日常的な作業を再評価し、それが技術・技能修得プロセスをきちんと踏んでいることを「見える化」させることも重要であろう。それによって、作業の意味付けがより深まり、本当の意味での技能実習と意識できるようになるはずである。
●本当の技能実習で、日本を人材育成のコアに
私自身は今後、以上のようなことを実現させたい。技能実習制度を本当の意味での技能実習にする。そのことが、日本を他国から差別化し、技術や技能を学びに来る人材を引き付けたい。技能実習を通じて、アジアにおける人材育成のコアとしての役割を日本が果たすように促したい。
インドネシアの地方の現場と日本の地方の現場の両方を知る自分だからこそ、その両者のニーズをつなぎ合わせ、両方の地方にとってウィン=ウィンになるような仕組みづくりを試みたい。
地方政府や地元企業家と一緒に、技術や技能を学ぶ意欲と使命感を持った人材を発掘・選抜。その技術・技能を教え人を育てられる日本の受入企業を見つけてつなぐ。日本での技能実習プロセスをしっかりモニタリング。祖国へ帰国後、その人材が地域の現場で何をするのか、学んだ技術や技能はどのように活かされているのかについて、地方政府や地元企業家と一緒にずっとモニタリングしていく。
●だから私はインドネシアの地方へ行く
だからこそ、私はインドネシアの地方へ行く。自分たちの地方をどうしていきたいのか、真剣に考え、行動しようとしている地方へ行く。その地方が直面する様々な課題は、日本の地方のそれと本質的に変わるものではない。その課題を解決・緩和するためにどのような人材をどのように育成していくか。
それは、単なる数合わせではない。日本側で不足する人数を揃えて調達すればいい、という話ではない。地方の期待を背負った大事な人材を日本でしっかり育てる、ということなのである。前にブログで触れた、固有名詞で捉える世界なのである。
技能実習制度を本当の技能実習にする。これは、かつて日本の専門家が海外へ出て行って人材育成を行ったこととは逆に、外国から来た研修生に対して日本の受入企業が指導し、日本で人材育成を行う、ということである。これまでに海外での様々な人材育成のノウハウを蓄積してきたJICAやAOTSなどの政府機関が、技能実習制度を本当の技能実習とすることに役割を果たせる可能性があるのではないか。
●介護・看護でも、農業でも必要な人材育成
以上の話は製造業をイメージしていたが、介護・看護や農業でも同様である。
急速な高齢化が進むアジアでは、遠くない将来、多くの介護・看護人材が必要になる。日本は、そうした介護・看護人材を量的に育成するだけでなく、いずれ各国で介護・看護人材を育成できる指導者的人材を育てて輩出することを考えるべきである。今、日本で受入れている介護・看護人材をそのような目で育てていくことが求められてくる。
農業でも、技能実習では単なる労働力ではなく、農業経営のできる人材育成と位置づけるべきである。農業労働者ではなく農業経営者となった彼らは、帰国後、自分の農村でのリーダー的存在となり、村づくりや産品振興の先頭に立って、地域のために活躍できる人材となっていくはずである。
●特定技能は「労働者」、技能実習と明確に分ける
2019年4月から始まった特定技能は、研修生ではなく「労働者」という色彩が濃い。単純労働も可能という解釈であり、単に高賃金を求める外国人労働者は、こちらのカテゴリーに含まれていくことだろう。
ただ、少なからぬ企業は、特定技能では転職が認められることから、3年間縛り付けられる技能実習を選好するものとみられる。だとするならば、ここではっきり、技術や技能を教えて人材育成するならば技能実習、人手不足解消のための労働者として雇うならば特定技能、と分けるべきと考える。
そして、技能実習をきちんと行う企業は、たとえ経営が厳しくとも、人材育成企業として行政が称え、政策的な優遇措置を採って地域に存続させる。一方、労働者として特定技能ビザで雇った外国人労働者は、日本人労働者と同様の権利を認め、転職もやむなしとする。
もっとも、特定技能ビザで雇ったとしても、技術や技能の修得を図り、技能国家試験の上級に合格させるなど、人材育成に貢献した企業は、技能実習の場合と同様に、人材育成企業として行政が支え、地域に存続させることを考えるべきであろう。
●人材育成を通じて送り出し国の地方と日本の地方をウィン=ウィンに
日本が外国人労働者に選ばれる国になるために、外国人労働者への法的保護を強めたり、これまでより働きやすい環境を整えることは基本中の基本である。そして、技術・技能を学びたいという彼らも、いつまで過去の日本へのあこがれを抱き続けるかは定かでない。日本が彼らに選ばれる理由をもっと真剣に考える必要がある。
そして、彼らの評価が変わらない今のうちに、送り出し国の地方にとっても、受け入れる日本の地方にとっても、地域活性化の観点からウィン=ウィンとなるような事例・仕組みづくりを始めることに意味がある。
ここに書いたことは、理想論かもしれない。でも、ことインドネシアに関して、インドネシアと日本とをつなぐプロとして、私はそれを実現させたい。興味を持たれた方は、是非、ご連絡いただきたい。
そして、彼ら外国人労働者が単なる人手としてではなく、地域活性化にとっても戦力として生かしていける可能性について、別途、このブログで論じることにしたい。
今回、インドネシアに来て、本当にびっくりしているのは、日本の新たな在留資格「特定技能」への元研修生からの関心のものすごさです。
弊社のフェイスブック・ページで、特定技能に関する記事を書き、私がアドバイザーを務めている、元研修生らの親睦団体「インドネシア研修生実業家協会」(IKAPEKSI)のエディ会長らと会った後、ものすごい数のメールやメッセージやWAが来るようになりました。
フェイスブック・ページのアクセス数は、通常だとせいぜい多くても500件程度なのですが、今回のアクセス数は、西インドネシア時間の4月29日午後10時現在、4万件近くになっています。
ほとんどのメッセージが「また日本へ行って働きたい」というもので、どうやったらそれが可能になるかを尋ねるものでした。
特定技能ビザを取るには、日本語能力試験(N4相当)と各対象職種の特定技能評価試験に合格することが条件ですが、日本で3年間技能実習生として活動した者はそれらの試験免除でビザを取ることができる、とされています。
このため、インドネシアでは今、元研修生がもう一度日本へ行ける、と盛り上がっているのです。それを煽っているのが、これまで技能実習生を日本へ送り出してきた全国各地の送り出し機関(LPK)で、「特定技能ビザでもう一度日本へ行ける」と喧伝しています。
その結果、送り出し機関のなかには、自分たちがすぐに日本へ送り出してあげると言って、元研修生から5000万ルピア(約41万円)を徴収するようなところもあらわれています。先走る日本側もそうした動きの裏にいる様子です。
これまで、帰国した元研修生はもう一度日本へ研修生としていくことはできないため、海外出稼ぎを望む彼らの多くは、韓国などへ労働者として出かけていくことが多かったといいます。それが、再び、日本へ行けるという話を聞いて、飛びついているようなのです。
スマランで元研修生に特定技能について説明する機会がありましたが、以前世話になった受入企業から「特定技能ビザで戻ってこないか」と声をかけられている元研修生がけっこう多くいたのにもびっくりしました。
しかし、特定技能を実施する前提として、日本政府とインドネシア政府との間で、悪質な仲介事業者の排除等を目的とする協力覚書(Memorandum of Cooperation, MOC)が締結されている必要があります。残念ながら、協力覚書はまだ締結されておらず、いつ締結されるかも見通しは立っていません。
大統領選挙をはじめ5つの選挙を同時に実施したインドネシア側も、天皇退位・新天皇即位を迎える日本側も、大変難しい時期だったということも考えられます。
一部の悪質な送出し機関は「協力覚書は既に締結済」と言ったり、すでに登録支援機関を自称して人集めを行ったりしているところもあると聞きました。
弊社・松井グローカル合同会社も現在、登録支援機関として認めてもらえるように入管へ申請中ですが、結果が出るのは6月か7月の予定で、今はまだ登録支援機関としての活動はできない状態です。
インドネシアで私は、「特定技能は政府間の協力覚書の締結があって初めて実施される」と様々な元研修生へ説明と説得をすることとなり、そのせいか、徐々に騒ぎが静かになってきた感があります。
西スマトラなどいくつかの地方からは、「日程を決めて特定技能の説明に来てほしい」との依頼も受けました。本来であれば、インドネシア政府や日本政府が説明すべきものと思うのですが、あやふやな情報で詐欺まがいの状況もあるなか、できる限りの協力はしていきたいと思います。
そうしたなかで、私のところでも、日本へ行きたい元研修生や彼らのデータを収集している送り出し機関とのコネクションがいろいろできてきました。どこにどんな職種に従事していた元研修生がいるか、という情報が入ってきています。
日本の企業様で、以前、インドネシア人研修生を受け入れていて、今度また特定技能ビザで受け入れたいという希望をお持ちの企業様や、新たに受け入れてみたいと思う企業様がありましたら、お手伝いをさせていただきたいと思います。
二国間の協力覚書が締結しておらず、弊社もまだ登録支援機関として認定されたわけではないので、すぐに実際に動くことはできませんが、協力覚書と登録支援機関認定が完了してすぐに動けるよう、情報は収集しておきたいと思います。
インドネシア人元研修生を特定技能ビザで受け入れてみたいという企業様がありましたら、元研修生の名前と受け入れた時期、業種・職種などを、メールにて松井グローカル合同会社・松井(matsui@matsui-glocal.com)までお知らせいただければ幸いです。