インドネシアはコーヒーでも名の知れた場所です。日本でよく聞くのは、トラジャ、マンデリンなどでしょうか。この30年で、インドネシアのコーヒーは大きく変わりました。もしかすると、東南アジアでコーヒー文化が最も根付く場所になるかもしれません。
私がインドネシアに行き始めた30年前、インドネシアでお茶のほうがコーヒーよりもメジャーでした。しかも、砂糖のたっぷり入ったお茶です。コーヒーもありましたが、ネスカフェなどのインスタントが主流で、これもやはり砂糖をたっぷり入れて飲みました。
その後、お茶は瓶入りの甘い茶飲料(Teh Botol、Teh Kotak、Teh Sosroなど)が主流となりました。コーヒーは、コーヒー+砂糖+ミルクパウダーの三位一体型インスタントコーヒーが主流となり、ジャカルタの渋滞緩和策Three in One(朝夕の決まって時間に決まった道路へ乗り入れるには自家用車1台に3人以上乗車する決まり。今は廃止)に因んで、3 in 1などと呼ばれていました。
おそらく10年ぐらい前からだと思いますが、ジャカルタでインドネシア産のコーヒーをパーパードリップで入れるカフェが現れ始めました(それまでのコーヒーは、コーヒー粉に熱湯を注いで、粉が沈殿した上澄みを飲むものでした)。スターバックスがインドネシアで展開し始めてすぐぐらいだったと思います。その後、スターバックスを模したカフェのフランチャイズチェーンが現れるとともに、居心地のいいカフェがジャカルタのあちこちにできていきました。
5年前、私はジャカルタに新たなカフェ文化が根付き始めた、と思い、エッセイも書きました。その後、カフェ経営者はバリスタ認証(どのように取得しているかは定かではありませんが)を競って取り始め、インドネシア各地のコーヒー豆をペーパーフィルターを使って淹れて飲ませるようになっていき、若者たちが集うようになりました。
インドネシアのコーヒー産地は、実はたくさんあります。それも、2000メートル級の高地が多く、各々の土地の土壌や気候の違いから生まれたアラビカ種が出回っています。
ガヨ(アチェ)、マンデリン(北スマトラ)、リントン(西スマトラ)、ランプン、トラジャ(南スラウェシ)、バリ、フローレス、パプアなどなど、インドネシア国内だけでいくつもの産地があり、それらがブランド化しています。ガヨ・コーヒーなどは、地理的表示保護(GI)認証をとって、ブランドを守り始めてもいます。
ジャワ島でも、南バンドンやバニュワンギなどで、オランダ植民地時代からに激賞された高品質コーヒーの復活やよりローカルなブランド化などの試みが次々出始めています。
一国の中でこれほどたくさんのコーヒーの銘柄を楽しめるところは、世界中でもあまりないのではないかという気がします。
この現象は当初、ジャカルタに限られていました。しかし、次第にスラバヤなどの地方都市へも広がっていきました。そして、今では、コーヒー産地にも、そこで採れたコーヒーを淹れて飲ませるカフェが展開し始めました。
アチェ州中アチェ県のタケゴンは、ガヨ・コーヒーの生産集積地ですが、この素敵な高原都市にも、ガヨ・コーヒーを楽しめる何軒かのカフェがありました。コーヒー商がカフェも経営している様子です。
この店にもバリスタの認定証がありました。
別の店は、アチェ州の州都バンダアチェの近くにも支店を出していて、そこでも美味しいガヨ・コーヒーを飲むことができました。
ガヨ・コーヒーも出している豆が3〜4種類あり、それを上澄み、ペーパーフィルター、サイフォンのどれで淹れるかを選ぶようになっています。もちろん、味はなかなかのものでした。
北スマトラ州ダイリ県の県都シディカランは、マンデリン・コーヒーの集荷地ですが、ここにも数軒のカフェがあり、若者たちで賑わっていました。
以前、コーヒー産地ではいいコーヒー豆はすべて輸出し、自分たちはインスタントコーヒーを飲む、とよく言われていたものでした。今では、コーヒー産地でも、いやそこでこそ、地元の人々が地元産のいいコーヒーを飲む、ということがインドネシアで起こっているのです。
植民地支配が長く、外部勢力に搾取されて従属させられている、という風潮が根強いインドネシアの人々が、自分たちの生産物を自分たちでも楽しむようになってきたことで、コーヒー文化がいよいよインドネシアの人々のものになり始めた、と思うのです。
そこで、来年あたり(夏ですかね?)から、インドネシアの複数のコーヒー産地をめぐり、コーヒー産地で地元の方々と一緒にコーヒーを味わうツアーをしてみたいと考えています!! もちろん、ジャカルタなどでのカフェ巡りもしたいと思います。
コーヒー産地はたくさんあるので、期間は1週間、毎年2〜3箇所の産地をまわることにしようかなと思っています。
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