自分は一応、コンサルタントと名乗っています。敢えて、教えないコンサルティングを標榜していきたいと思っています。
以前、JICA専門家でインドネシア政府に対する地域開発政策アドバイザーを務めたとき、アドバイザーやコンサルタントがどのような仕事だと見なされているかを理解しました。
ひと言でいえば、解決策を示してくれる仕事。
こうすればこうなるから、私が言ったとおり、このようにしなさい。そのようにペーパーを書いて、助言する。問題を解決してくれるスーパーマン、と言っても間違いではないでしょうか。
コンサルタントはその解決策を示して、対価としての報酬を受け取りますが、それを実行するのはコンサルタントにお願いした側です。
実行すると、コンサルタントが作文したとおりにはなかなかうまくいかないし、さらなる助言を求めるとなると、コンサルタントにさらなる報酬を支払わなければならなくなります。
コンサルタントは、「それは実行する能力が不足しているからだ」と言って、能力向上のための新たな研修プログラムの導入を勧めます。
その研修プログラムを導入した側は頑張って、能力向上の印として終了証をもらいます。そして、再び、コンサルタントの解決策に取り組みますが・・・。
コンサルタントという語を援助供与国・機関と置き換えても同じでしょう。
インドネシアでも日本でもどこでも、今日もまた、これと同じような出来事が起こっているかもしれません。
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この場合、コンサルタントが示した解決策は、本当に正しかったのでしょうか。コンサルタントが解決策を導くプロセスに、相手側はどれだけ関与したのでしょうか。
まず、最初の問題設定が間違っていたとしたらどうでしょうか。そう、最初にボタンの掛け違いが起こっていたとしたら、です。
相手側からすれば、都会から来たコンサルタントがいう問題設定が、まさか間違っているとは思わないかもしれません。思っていたとしても、「頭がいい人が考えたんだからきっと何か真実があるのかもしれない」「コンサルタントは組織トップの知り合いだし、政治家からの紹介でもあるから、間違っているなんて言って怒らせたらあとでどうなることか」などと考え、口をつぐむかもしれません。
次に、コンサルタントの仕事に相手側はどれだけ関わってきたでしょうか。住民を集めた公聴会なども開かれるかもしれませんが、そこでの発言に何らかの忖度が全くないと言い切れるでしょうか。
問題解決へ向けて、本音が出ているでしょうか。
本音が出るためには、その場が何を話しても安心できる場でなければなりません。そういう場をコンサルタントは作れているでしょうか。
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自分は、相手に問題解決を教えに行くのではなく、相手から本当の問題は何かを教えてもらいに行くという立場を採ります。
ちょっと、危なっかしいでしょうか。大丈夫か、この人は、と相手から思われるかもしれません。
もちろん、相手とお会いするまでに、二次情報だけでも、入手可能な限りの情報は収集し、できる限りの相手や地域に関する情報は頭に入れておきます。その段階でできる、自分なりの仮説も立てておきます。
でも、それは、自分の中に閉まっておきます。まずは、相手から教えてもらいます。
相手から話をお聞きしながら、簡単な対話を始めます。相手が答えやすい対話を続く限りしていきます。そのプロセスのなかで、自分が頭に入れてきた情報の再整理を行い、仮説の修正を続けていきます。
相手に対して、最初に「問題は何ですか」とは絶対に訊きません。だって、問題が分かっていれば、解決策もおのずとわかるはずだからです。
対話を続けながら、最初に「問題」と思っていたものが本当にそうなのか、違う角度からみなければならないのではないか、実はもっと違うことが「問題」だったのだ、というような気づきが起こっていくこともよくあるものです。
対話のプロセスを通じて、相手が納得する「問題」にたどり着いたとき、相手はそれが自分自身とも関わりのある「問題」だと認識できるのではないでしょうか。
ここで初めて、「問題」に対して相手がオーナーシップを感じ始める。すると、その「問題」は、誰かよそ者に解決してもらうのではなく、自らもその解決へ向けて関わっていかなければならない。自分事として認識するようになります。
そうなれば、後は、コンサルタントが何を言おうとも、自分たちで捕まえた真の「問題」を解決しようと自分たちで動き始めるのではないでしょうか。そうなれば、コンサルタントの立場は助言を適宜与える程度の従となり、いずれは必要とされなくなる存在となります。
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私は、そのような、教えないコンサルティングを自分のモットーとしていきます。
地域をこれからどうしていったらいいか分からない、という漠然とした不安を持った方々とお会いし、対話を続けたいのです。そして、いつの間にか、コンサルタントが何かするのではなく、そこの方々が自分で何かしていくようにコンサルタントが適切に促す、という転換を起こしたいのです。そして、必要がなくなれば去る、という具合です。
インドネシアでも日本でも、様々な地方の実状を知りながら、そんな風に思っています。教えないコンサルティングは確実に求められている・・・、と。
そして、これは、日本全国の地方をめぐりながら、その土地土地の人々の話を丹念に聞き、適切な助言を行い、勇気づけ励ましてきた、尊敬する宮本常一氏の生き方に近づくことなのかもしれないと改めて思いました。
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でも、それはどうやってビジネスとなるのか。対価をどうもらうのか。
そこが当面の大きな課題です。家族をどうやって養っていくのか。自分たちがどうやって生活していくのか。
日々、できる限りの経費節約に努めつつも、現実の世界に目をつぶるわけにはいきません。自分なりの生活を成り立たせる経営モデルを造らなければなりません。
それでもなお、私は、教えないコンサルティングを目指していきます。
こうしたやり方に価値を見い出していただける方々と一緒に、まずは活動していきたいと思います。私と対話してみたいと思われる方は、いつでもご連絡ください。
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1月13~19日は、インドネシア・アチェへの出張へ行ってきます。羽田空港国際線ターミナルは、キラキラしていて、まぶしいぐらいでした。